わたしを離さないで

本を読んだ感想

カズオ・イシグロ氏による長編小説。イシグロ氏のノーベル文学賞受賞にともなって本作の注目度も高まったことを機に、読んでみました。
優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設へールシャムの親友トミーやルースも「提供者」だった。キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度……。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく。というあらすじ。
終始、主人公キャシーの淡々とした語り口調で語られる思い出話というスタイルで物語は進んでいく。淡々とした文体で語られるにつれ、徐々に明らかになってくる異様な世界はとてつもなく不気味であり、悲しみで溢れている。
自分の行く末が生まれた時点で決しているという宿命を背負った現実を前に、自分だったらどう生きるか、命とは何かといったことを考えさせられる作品。
作中の登場人物は、自らの宿命を受け入れ諦観しているものの、それぞれが心のどこかでその宿命に抗いたいという思いを秘めており、逃れられない現実との葛藤が繊細に描かれており、とてつもない切なさを感じた。

本の説明

著者:カズオ・イシグロ
定価:800円+税
ページ数:439ページ
発売日:2008/8/25

本の情報

出品者 takahashi
出品日 2023年1月9日
カテゴリー 文芸 / 小説
本の状態 目立った傷や汚れなし
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配送の方法 クリックポスト
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