月と蟹

本を読んだ感想

道尾秀介による小説。直木賞を受賞した傑作です。
舞台は鎌倉の海辺の田舎町。転向生である小学生の二人の男の子、慎一と晴也は、それぞれ家庭環境に問題を抱えており、また、同級生にも馴染めずにいた。そんな二人は、ヤドカリを神様に見立てた願い事遊びを考えだし、其々の不遇からの祈りをヤドカリに託すようになる。そこに、同じく家庭に問題を抱えた1人の少女が加わり、3人の関係性が徐々に崩れ始める。ーというお話。
小学生3人の何気ない日常を切り取ったような作品である本作は、3人の心理描写がとても丁寧に、そして、生々しく描かれており、とても面白いです。多感で揺れ動きやすい不安定な心や無邪気さ故の残虐さといった子供ならではの心理描写は、とても共感できます。純粋で清らかな子供の心が、嫉妬や憎しみといった負の感情で染まっていく様子が、とても繊細に描かれており、ドキドキしながら読み進めました。
3人の関係性が徐々に崩れ始め、微妙な距離感になっていく描写がとても、緻密で面白いです。また、鎌倉の海や山といった風景の描写が、とても優れていて、文章が映像として浮かび上がってくる心地よさがあります。
自分の子供時代を思い出すような、甘酸っぱくもあり苦しくもある素敵な作品です。ぜひ読んでみて下さい。

本の説明

著者:道尾 秀介
定価:590円+税
ページ数:358ページ
発売年:2013年

本の情報

出品者 takahashi
出品日 2023年3月19日
カテゴリー 文芸 / 小説
本の状態 目立った傷や汚れなし
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配送の方法 クリックポスト
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価格 ¥300