火車

本を読んだ感想

宮部みゆきのベストセラーミステリー小説。平成初期の作品であり、当時の社会問題としての消費者金融をテーマとしている。
足を銃で撃たれ、休職中の刑事・本間が、亡き妻の従兄弟・和也に頼まれて、失踪した彼の婚約者・関根彰子の行方を探すことから物語は進み、その過程で、彼女に隠された驚愕の秘密が徐々に明かされていく。
基本的に本間の視点から物語は展開していくが、微細にわたる情景描写が秀逸で、話が進んで行くにつれて失踪した女性の正体が薄皮を剥ぐようにわかってくるのが不気味で怖い。同時に、複雑な要因が1本の線になっていき真相にじわじわと迫っていく過程はとても面白い。
また、登場人物にもそれぞれ過去・背景があり、許されないこととは分かっていても容疑者の過去に同情せずにはいられない主人公の心情の変化などが丁寧に描かれていて面白い。
火車というタイトルから「火の車」を連想する通り、本作は消費者金融やクレジットカードの乱用、借金地獄・破産といった当時の時代性を色濃く反映した作品になっているものの、規制が進んだ現代においてもカードや借金による多重債務は十分あり得る話だし、時代の古さを感じさせるような内容では決してなかった。

本の説明

著者:宮部 みゆき
定価:857円+税
ページ数:590ページ
発売年:1998年

本の情報

出品者 takahashi
出品日 2023年1月15日
カテゴリー 文芸 / 小説
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