きいろいゾウ

本を読んだ感想

都会から九州の田舎に引っ越してきた若い夫婦。夫の名は無辜歩(むこ・あゆむ)、妻の名は妻利愛子(つまり・あいこ)。お互いを「ムコさん」「ツマ」と呼び合うちょっと変わった二人は田舎暮らしを始める。
田舎で近所の一風変わった人たちと付き合いつつも穏やかに過す日々。しかし、ある日、ムコに届いたとある手紙を機にムコがツマを残して東京へ向かう。それは背中の大きな鳥の刺青に纏わる「ある出来事」に向き合うためであった。ーというお話。
ちょっと変わった夫婦の日常を描く当作品は、最初から最後まで穏やかでゆっくりとした時間が流れている。幻想と現実の話が入り混じる不思議な世界観に引き込まれるにつれ、この時間がとても心地よく感じてくる。
物語はムコさんとツマさんそれぞれの視点が交互に描かれる形で進んでいく。それはまさに男の視点と、女の視点であり、同じ時間を共有しつつも男と女で何を想い、何を感じたかが違っているのが面白い。それぞれの心理描写が絶妙に描かれているので、思わず感情移入してしまう。
また、微笑ましい夫婦の日常にのみ焦点が当てられているのではなく、それぞれが抱えている影についても丁寧に描かれており、最後まで飽きることなく読めました。

本の説明

著者:西 加奈子
定価:657円+税
ページ数:488ページ
発売年:2008年

本の情報

出品者 takahashi
出品日 2023年1月29日
カテゴリー 文芸 / 小説
本の状態 目立った傷や汚れなし
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