ナイフ

本を読んだ感想

重松清による5つのストーリーからなる短編小説集。『ビタースィート・ホーム』以外は全て「いじめ」を題材にしており、いじめの描写はかなり凄惨で生々しい。でも、だからこそ、今現実に起こっている「いじめ」の実態に非常に近いのだと思いました。
本書は、いじめられる側の子どもの視点から展開されます。いじめられる子供、その子供の家族、いじめを見ていながら手を差し伸べない周囲の人、といった様々な人物の心理描写がリアルに描かれているため、どの人物の苦悩や葛藤にも感情移入してしまいます。
そして、陰湿で卑怯ないじめに対して、子供が向き合い家族とともに戦う姿は涙が溢れます。
胸が苦しくなって、ときには読む手を止めてしまうほど、終始、重いムードで展開される本作ですが、救いがあるのは、決してハッピーエンドとまではいかないけれど、僅かな希望が描かれているところにあると思います。
いじめがなくなって幸せが降ってくるなんてべたな展開ではないけれど、暗闇の中で、もがいてもがいて見えてきたわずかな光。その光がとても丁寧に描かれているから、読了後には大きな感動があります。いじめの残酷さを再認識する意味でも、ぜひ読んで頂きたい一冊です。

本の説明

著者:重松 清
定価:630円+税
ページ数:403ページ
発売年:2000年

本の情報

出品者 takahashi
出品日 2023年1月29日
カテゴリー 文芸 / 小説
本の状態 目立った傷や汚れなし
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配送の方法 クリックポスト
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