特集貴志祐介のおすすめ小説10選 極上のホラーからミステリーSFまで幅広く紹介
ホラー・SF・ミステリー小説を中心に、多くのベストセラー作品を世に送り出してきた大人気作家・貴志祐介。
数多くの賞で高い評価を得ており、映画や漫画化された作品もとても多いです。
そこで今回は、貴志祐介の作品をまだ読んだことがない初心者の方向けに、独自におすすめの小説を厳選しランキング形式でまとめてみました。
どれも人気の作品でとても面白いので、ぜひ読んでみて下さい。
『貴志祐介』 とは
経歴や受賞歴
貴志祐介は1959年大阪府出身の小説家です。京都大学経済学部を卒業後、生命保険会社に入社しますが、30歳の時、会社を退社し執筆活動に専念します。
その後、1996年に『ISOLA』で日本ホラー小説大賞・長編賞佳作を受賞し、同作が『十三番目の人格 ISOLA』と改題して刊行されたことで小説家としてデビューします。
1997年には『黒い家』で日本ホラー小説大賞を受賞したほか、
2005年に『硝子のハンマー』で日本推理作家協会賞、2008年に『新世界より』で日本SF大賞を受賞するなど数多くの受賞歴を有しています。
作品の特徴や魅力
貴志祐介作品は、細部まで緻密に作り込まれた独特な世界観が魅力です。
現実離れした設定に思えても、しっかりとした筋が通った設定でリアリティがあるため、恐怖感や臨場感が膨れ上がります。
ストーリーに矛盾点や違和感がなく、しっかりと辻褄があった展開が繰り広げられるため、最後まで熱が冷めることなく、夢中になって読んでしまいます。
また、読みやすく美しい文章とストーリーの巧みな運び方もとても魅力です。一度読み始めると手が止まらない作品が多いです。
おすすめ小説 10選
黒い家
- 保険金詐欺を題材にしたホラー小説
- 殺人鬼が迫ってくる臨場感が凄い
- 犯人に真っ向から立ち向かっていく主人公が格好良い
保険金詐欺を題材にしたホラー小説。日本ホラー小説大賞受賞作にして、漫画化や映画化もされた大ヒット作品です。
生命保険会社で保険金の支払い査定業務を担当している主人公の若槻慎二は、ある日、保険加入者の菰田重徳からの呼び出しにより菰田家を訪問すると、そこで、菰田家の子供が首を吊り死亡しているのを発見します。
菰田は子供に多額の死亡保険金をかけており、やがて、保険金の請求がされますが、若槻は菰田が保険金目当てに偽装自殺を仕組んだと確信し、独自に調査を始めます。
しかし、そこには恐ろしい恐怖が待ち受けていたのでした。
幽霊や心霊といった超常現象ではなく、人間の狂気を描いたホラー小説です。殺人に何のためらいもない殺人鬼が、主人公を執拗に追いかけ、迫ってくる描写は恐ろしく、背筋が凍りつきます。臨場感あふれる情景描写で、話に没入しながら、主人公と同じ目線でハラハラドキドキしながら読み進めることが出来ます。
また、ホラー要素のみならず、ミステリー要素も含まれており、犯人に迫っていく展開が面白いです。犯人に真っ向から立ち向かっていく主人公が格好良く、犯人との攻防戦は読み応え十分です。
硝子のハンマー
- 『防犯探偵・榎本シリーズ』1作目となるミステリー小説
- 謎を追う側と犯人側の両視点が描かれているのが面白い
- 仮説と検証を繰り返し、真相に迫っていく展開が面白い
『防犯探偵・榎本シリーズ』1作目となる長編ミステリー小説。日本推理作家協会賞を受賞し、人気ドラマ『鍵のかかった部屋』の原作となったベストセラー作品です。
オフィスビルの最上階で、介護サービス会社社長が何者かに撲殺されます。オフィスは防犯セキュリティが張り巡らされた密室内で、外部犯の線は薄く、隣室で仮眠をとっていた専務・久永が逮捕されます。
その後、専務から依頼を受けた女弁護士の純子と防犯コンサルタント・榎本が密室の謎に迫っていきます。
物語は2部構成からなり、前半は純子と榎本からの視点で、事件の真相に迫る展開を描き、後半は犯人の視点で、犯行に至るまでの経緯と犯行模様を描いています。
同じ場面を謎を追う側と犯人側の2つの視点から描かれているのが面白いです。物語全体の構成力の高さを感じる作品で読み応えがあります。
純子と榎本のコンビがとても良いです。仮説と検証を繰り返し、一つ一つ可能性をつぶしていきながら、地道に真相に迫っていく展開が面白いです。話の方向性が見えたと思いきや、思わぬ方向に進んでいく起伏に富んだストーリーからは目が離せません。
ミステリー要素あり、サスペンス要素ありで、とても満足度が高い一冊です。ぜひ読んでみて下さい。
青の炎
- 完全犯罪をもくろむ少年を描いたミステリー
- 殺人を通じて揺れ動く少年の心理描写がリアル
- 完全犯罪が見破られるかハラハラドキドキ
完全犯罪をもくろむ心優しき少年を描いたミステリー小説。漫画化や映画化もされた大ヒット作品です。
湘南に住む17歳の秀一は名門高校に通う優等生で、母と妹の3人で幸せな生活を送っていました。しかし、母が10年前に再婚しすぐに別れた男・曾根が秀一の家に居座り傍若無人に振る舞うようになったことで、幸せな生活は崩れ去っていきます。
家族を守るべく、法律手段に訴えた秀一でしたが、それすらも無力であることを悟ると、自らの手で曽根を殺害することを決意するのでした。
家族を守るため葛藤の末、曽根の殺害を決意する秀一の心の内があまりに辛いです。殺人は決して許されないと分かっていても、家族思いで純粋な心を持つ秀一に感情移入してしまいます。
また、殺人を通じて揺れ動く秀一の心理描写や、殺人場面の描写がとてもリアルに描かれているため、小説の世界に一気に引き込まれます。
頭の冴える秀一が完全犯罪をもくろみ、様々な仕掛けを施していく展開も見所の一つです。警察にトリックが見破られるかどうか、秀一と同じ目線でハラハラドキドキしながら読み進めることが出来ます。
新世界より
- 1000年後の日本を舞台にした長編SF小説
- 細部まで緻密に作り込まれた世界観に圧倒される
- 重厚で読み応え十分
1000年後の日本を舞台にした長編SF小説。日本SF大賞を受賞した大作です。
自然豊かな集落『神栖66町』は、周囲をしめ縄で囲まれ外敵から守られた閉ざされた世界で、人類が追い求めた『理想郷』がそこにはありました。
そして、人類は念動力を手に入れており、12歳の少女・渡辺早季は同級生たちと念動力の技を高め合う平和な日々を過ごしていました。
しかし、ふとしたきっかけで、彼女たちは禁断の歴史を知ってしまい、平和は徐々に崩れていってしまうのでした。
細部まで緻密に作り込まれた世界観に圧倒されます。ストーリーに矛盾点や違和感がなく、辻褄がしっかり合っているため、真実が明らかにされるにつれ、どんどん話に引き込まれていきます。
架空の世界を描いていながら、現代社会への警鐘も含まれており、とても重厚で読み応え十分の作品です。
天使の囀り
- 新感覚のホラー小説
- クライマックスはハラハラドキドキ
- 緻密に作られた世界観
今までにない新感覚のホラー小説。漫画化もされた人気の作品です。
アマゾンの探検から日本に戻ってきた高梨は明らかに人が変わっていました。以前は、死を異常に恐れる性格でしたが、帰国後は、死を恐れることはなくなり、むしろ死を求めるようになったのです。
そして、『天使の囀りが聞こえる』という謎の言葉を残し、高梨は自殺してしまいます。更には、アマゾンから帰ってきた他のメンバーも謎の自死を遂げていることが判明します。
一体、アマゾンで何が起こったのでしょうか。
物語は、高梨の恋人・早苗の視点から事件の真相に迫っていきます。早苗が一つ一つ謎を解明して、着実に真相に近づいて行く展開が見所です。真相に近づくにつれ、グロテスクさと恐怖が増していきます。
そして、明らかになる恐ろしい脅威。それに立ち向かっていく早苗。クライマックスはハラハラドキドキで最後まで気が抜けません。
荒唐無稽な設定かと思いきや、世界観がとても緻密に作られており、かなりリアリティがある作品です。ぜひ読んでみて下さい。
クリムゾンの迷宮
- 命を懸けたサバイバルゲーム
- ハラハラドキドキの連続
- 凄まじい臨場感
命を懸けたサバイバルゲームを題材としたホラー小説。
全く見覚えのない火星のような景色の中で目覚めた主人公の藤本。傍らにはゲーム機のような端末があり、『火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された』というメッセージが映し出され、サバイバルゲームに引きずり込まれます。
参加者は藤本を含めた男女9人。当初は協力関係にあった9人ですが、次第に殺し合いのデスゲームが始まってしまうのでした。
藤本の視点で綴られる本作は、サバイバルとホラーが入り混じった斬新な作品で、最初から最後までハラハラドキドキの連続です。
卓越した文章力が凄まじい臨場感を生んでおり、藤本と一緒に行動している気持ちで、追手が迫ってくる恐怖を感じます。
テンポよく、どんどん話が展開していくため、一度読み始めると読む手が止まらない一冊です。ぜひ読んでみて下さい。
悪の教典
- サイコパスを描いたサイコホラー小説
- サイコパスの思考回路が徐々に顔を出し始める恐怖
- テンポのよさとストーリーのリアリティが凄い
人を殺すことに躊躇がないサイコパスを描いたサイコホラー小説。山田風太郎賞を受賞し、直木賞の候補作にもなった作品です。
町田高校の英語教師・蓮実聖司は爽やかな見た目と快活な受け答えで生徒と保護者からの信頼が厚い人気教師。
しかし、蓮実の本当の姿は、他者への共感能力が欠如した生粋のサイコキラーだったのです。
邪魔だと判断した人間を次々と殺していく蓮実。しかし、蓮実の本性に疑念を持つ生徒が次第に現れるのでした。
序盤は学園ものを思わせるような平和な空気感が流れていますが、蓮実のおかしな思考回路が徐々に顔を出し始め、物語は一気に加速していきます。
テンポのよさとストーリーのリアリティで、一気に小説に引き込まれ、駆け抜けるように最後まで読んでしまう一冊です。
罪人の選択
- ミステリーとSFが収録された全4作の短編集
- 表題作は、本格的なミステリーで読み応え十分
- 緻密に作り込まれた独特な世界観が面白い
表題作を含む4作のミステリーとSFが収録された短編集。
表題作は、緊迫感あふれる本格ミステリー。時は1946年、妻を寝取られた男が間男の前に、一升瓶と缶詰を差し出します。
一方には毒が入っているとのこと。そして、どちらかを口にするよう間男は迫られます。
また、18年後にも、同じような選択を迫られる男がいます。果たして、二人はどちらを選択するのでしょうか。
物語は、2つの時間軸が切り替わりながら進んでいきます。分かりやすい文章で、綺麗にまとまっているので、スラスラと読めてしまいます。
また、短編でありながら、本格的なミステリーでとても読みごたえがあります。
その他の作品も、緻密に作り込まれた独特な世界観が面白く、とても満足度の高い一冊です。
雀蜂
- スズメバチとの死闘を描いたサバイバルホラー
- 主人公が知恵を絞って蜂と戦う展開が面白い
- 想像もしていなかったラストに驚く
スズメバチとの死闘を描いたサバイバルホラー。
作家の安斎が冬の山荘で目を覚ますと、妻が姿を消している上、室内には大量のスズメバチが飛び交っており、安斎に襲い掛かってきます。
安斎は、3年前に一度スズメバチに刺されていて、もう一度刺されれば、アナフィラキシーショックで死の危機に瀕する状況。
通信手段が遮断され、助けを求める事が出来ない状況下で、安斎のスズメバチとの闘いが始まります。
次から次へと襲い掛かってくる蜂の大群に対し、安斎が知恵を絞って戦う展開が面白いです。蜂の習性や特徴がとても詳細なため、リアリティがあってハラハラします。
そして、誰が罠を仕掛けたのがポイント。想像もしていなかったラストに驚かされること間違いなしです。
ダークゾーン
- 異世界を舞台に繰り広げられる生死を掛けた戦闘ゲーム
- 知力の高い両者の攻防が面白い
- 2つの話が並行して描かれる構成が見事
異世界を舞台に繰り広げられる将棋を模した戦闘ゲーム。
プロ棋士を目指す塚田が目覚めた場所は異空間の軍艦島。自身は赤の大将となっており、相手の青の大将はライバル棋士の奥本になっています。
その後、ルール説明が入り、7番勝負で先に4勝した方が勝者となり敗者は消滅するとのこと。否応なしに、開始されたゲームに塚田は巻き込まれていくのでした。
将棋棋士を目指す者同士の知力の高い攻防が見所の作品。同じ勝負の繰り返しかと思いきや、一局、二局と積み重ねていくごとに展開も異なり、盛り上がりも増していくため、最後まで飽きずに楽しく読めることが出来ます。
ゲームの間隙に現実の日常が描かれている構成も見事。読みやすい文章と、起伏のあるストーリーで没入感を味わえる一冊です。
おすすめ小説10選 作品一覧
貴志祐介の新刊 / 新作最新情報をチェックしてみよう
梅雨物語
発売日:2023/7/14 電子書籍:〇 文庫本:×
- 3編のホラーミステリーが収録された中編集
- 兄が残した一冊の句集の秘密を解く「皐月闇」が印象的
- どの話も三者三様の趣があるため満足度が高い
3編のホラーミステリーが収録された中編集。
その中でも「皐月闇」が印象的。自殺した兄が残した一冊の句集に秘められた秘密を解くべく、妹は俳人でもあるかつての恩師・作田のもとを訪ねます。
作田の助力を得て、一つ一つの俳句に込められた秘密を少しずつ紐解いていく二人でしたが、真実に近づくにつれ、恐ろしい恐怖が浮かび上がってきます。
俳句の解釈が二転三転しながらも着実に真相に迫っていくドキドキの展開がたまらなく面白いです。徐々に高まっていく不気味さもとても魅力的で、ページをめくる手が止まりません。
どの物語も、ホラーミステリーという点では共通しているものの、三者三様の趣があるため、最初から最後まで楽しめる満足度の高い一冊です。貴志祐介の入門書としてもオススメです。
秋雨物語
発売日:2022/11/29 電子書籍:〇 文庫本:×
- 不思議で不気味な世界観に包まれた4編のホラーミステリー
- 読みやすい文章でテンポもよく手軽に読める
- どの話もオチがしっかりとしており爽快感が残る
不思議で不気味な世界観に包まれた4編のホラーミステリーが収録された短編集。
その中でも「こっくりさん」が印象的。死にたいと願う4人の小学生が集まり、死者が出ると言われる「こっくりさん」を始めます。それから18年後、再び死を願うほど追い詰められた彼らは、2回目の「こっくりさん」を始めるべく集まりますが・・・。
物語全体を覆う不気味さと、先が読めないハラハラ感が相まってとても面白いです。衝撃のラストには、思わず声が出てしまいます。
また、どの話もオチがしっかりとしており、物語として綺麗にまとまっているため、後味は悪いですが爽快感が残ります。読みやすい文章でテンポよく物語は展開していくため、間隙に手軽に読める一冊です。
貴志祐介の作品を読んでみよう
貴志祐介のおすすめ小説をランキング形式で紹介いたしました。いかがでしたでしょうか。
今回は代表作から最新作まで厳選して紹介しましたが、他にも多くの人気作品があります。
電子書籍化や文庫本化されている作品も多いので、気軽に面白いと思った一冊を手に取り、読んでみてはいかがでしょうか。お気に入りの作品がきっと見つかるはずですよ。
この記事を書いた人
東京都文京区在住のけんぞうです。
本が大好きで、自分が読んで面白かった本などを中心にWEB編集者として様々な情報を発信しています。
ぜひ、本の出品をお待ちしております。