特集宮部みゆきのおすすめ小説7選 昔の名作から最新作まで幅広く紹介します
重厚な時代小説からミステリー、ホラー、サスペンスまで幅広いジャンルの作品を手掛け、直木賞をはじめ数多くの賞を受賞している日本を代表する大人気作家・宮部みゆき。
デビュー30周年を迎えてもなお、第一線で活躍し続ける宮部氏の作品は、昔のものから最近のものまでどれも読みやすく多くの人に愛され続けています。
そこで今回は、宮部みゆきの作品をまだ読んだことがない初心者の方向けに、独自におすすめの小説を厳選しランキング形式でまとめてみました。
どれも人気の作品でとても面白いので、ぜひ読んでみて下さい。
『宮部みゆき』 とは
経歴や受賞歴
宮部みゆきは1960年東京都出身の小説家です。OLや法律事務所での勤務経験を経て、1987年に「我らが隣人の犯罪」で小説家としてデビューしました。
その後、『龍は眠る』(1991年)で日本推理作家協会賞、『火車』(1992年)で山本周五郎賞、『理由』(1998年)で直木賞、『模倣犯』(2001年)で毎日出版文化賞特別賞を受賞するなど数多くの賞を受賞し、日本を代表する大人気作家としての地位を確立しています。
作品の特徴や魅力
宮部みゆき作品は、情景描写や心理描写が緻密で、小説の世界観に一気に引き込まれるのが魅力です。文章が映像化され、スッと頭に浮かんでくる心地良さがあります。
構成力の高さも魅力の一つで、一度読み始めると、先が気になってページをめくる手が止まりません。
おすすめ小説 7選
火車
- 消費者金融をテーマとしたベストセラーミステリー
- 謎の女の正体が次第に明らかになっていく展開が面白い
- 作品の古さを感じない不朽の名作
山本周五郎賞を受賞したベストセラーミステリー小説。平成初期の作品であり、当時の社会問題である消費者金融をテーマとした作品です。
足を銃で撃たれ、休職中の刑事・本間は、亡き妻の従兄弟・和也に頼まれて、失踪した和也の婚約者・関根彰子の行方を探すことになります。和也によれば、彼女は、自己破産経験者だということが判明した翌日から姿を消したとのこと。関根彰子は一体何者なのでしょうか。捜査を開始した本間でしたが、次第に関根彰子の驚愕の正体に行きつきます。
緊迫感あふれる展開の連続で、ページをめくる手が止まらない一冊です。とにかく、謎に包まれた関根彰子の正体が徐々に明らかになっていく展開が面白いです。
火車というタイトルから「火の車」を連想する通り、本作は消費者金融やクレジットカードの乱用、借金地獄、破産といった平成初期の時代性を色濃く反映した作品になっています。当時と比べて規制が進んだ昨今ではありますが、カードや借金による破産は決して他人事ではなく、色々と考えさせられます。作品の古さを感じない不朽の名作で、大変おすすめの一冊です。
理由
- 宮部みゆきを代表する直木賞受賞作
- 謎が全て解き明かされる爽快感
- フィクションとは思えないリアリティ
宮部みゆきの最高傑作とも称される、直木賞を受賞したミステリー小説です。
とある高層マンションの一室で発見された4人の遺体。1人は転落死で、残りは室内で何者かに殺されていました。当初、家族だと思われていた4人ですが、捜査が進むにつれ、他人同士であることが判明します。一体彼らは何者なのでしょうか、そして、犯人は誰なのでしょうか。
本作は、数多くの関係者から見た事件を描くことで事件の真相に迫っていく、聞き取り形式で進んでいきます。関係者の証言一つ一つがとても詳細に語られているため、フィクションとは思えないリアリティがあり、話に引き込まれます。
関係者の証言が積み重なって真実が見えてくる展開が面白いです。序盤に膨れ上がっていく謎は、全て解き明かされるため、読んでいて爽快感がありますし、作品の構成力の高さを感じます。
話の展開が早く、視点が小気味よく入れ替わっていくため、長編でありながら、最初から最後までワクワクしながら読める一冊です。
模倣犯
- 連続女性拉致殺害事件を描いたサスペンスミステリー
- 目まぐるしく移り変わる展開はハラハラドキドキの連続
- 心理描写が丁寧で感情移入出来る
連続女性拉致殺害事件を、複数の関係者の視点から描いたサスペンスミステリー。毎日出版文化賞特別賞、回司馬遼太郎賞、芸術選奨文部科学大臣賞など数多くの賞を受賞し、テレビドラマ化や映画化もされた宮部みゆきの代表作の一つです。
公園で見つかった若い女性の右腕。同じ公園からは、3ヵ月前に失踪した古川鞠子のバックが見つかるが、犯人から「右腕は古川鞠子のものではない」とテレビ局に電話が掛かってきます。
鞠子の祖父にも電話を掛け不敵な挑発を続ける犯人。やがて、女子高生の死体と鞠子の白骨体が発見されます。
目まぐるしく移り変わる展開から、目が離せず、小説の世界観に一気に引き込まれる作品です。ハラハラドキドキの連続で、先が気になって仕方がないです。
視点が入れ替わっていく構成もとても良いです。単調にならず、常に新鮮な気持ちで読み進めることが出来ます。
どの人物も、過去や背景がしっかりと深堀されており、心理描写も丁寧なため、感情移入できる点もポイントが高いです。
レベル7
- とてもスリリングな長編サスペンス小説
- 謎が1つ1つ明かされていく展開が面白い
- 見所が多く、最後まで楽しめる
700ページを超す長編サスペンス小説。1990年に刊行され、2回にわたってテレビドラマ化された人気の作品です。
「レベル 7 まで行ったら戻れない。」という謎の言葉を残して失踪した少女を探す物語と記憶喪失の男女が自らの記憶を取り戻そうとする奔走する2つの物語が同時並行で進んでいきます。
冒頭からいきなりミステリアスで不気味な光景が広がり一気に話に引き込まれます。マンションで目を覚ました男、隣には見知らぬ女、2人の腕に刻まれた「level7」という謎の文字、札束がぎっしり詰まったスーツケース、拳銃、血の付いたタオル。何もかもが謎に包まれた状況にこれからどう話が展開していくのか先が気になって仕方がないです。
そして、謎が1つ1つ明かされていく展開が面白いです。起伏に富んだストーリー展開は、とてもスリリングで、ワクワクの連続です。
登場人物の意外な接点や2つの物語の繋がりなど見所が多い点もポイント。長編の作品ですが、最後まで楽しく読める一冊です。
魔術はささやく
- 日本推理サスペンス大賞を受賞した傑作サスペンス
- 謎に迫る展開がスリリングで面白い
- ハラハラドキドキの連続
日本推理サスペンス大賞を受賞したサスペンス小説。
1人目はマンションの屋上から飛び降りた女性。2人目は地下鉄に飛び込んだ女性。そして3人目はタクシーの前に飛び出した女性。一見何の関連もないと思えた3人の女性の謎の死。しかし、これらは何者かによって仕組まれたものであった。そして、魔の手は4人目に伸びる。一方、3人目の死に関与して逮捕されたタクシー運転手の甥の守は、ふとしたきっかけから事件の真相に迫っていきます。
守が謎に迫っていく展開がスリリングで面白いです。謎めいた事件の全貌が徐々に見えてくる過程が絶妙なスピード感で巧みに演出されていて、小説の世界観に引き込まれます。着実に少しずつ真実に近づいていく感覚がとても心地良いです。
また、ストーリー展開に無駄を感じない構成力の高さがポイント。本作は、複数の話が同時並行的に描かれていますが、話の切り替えがとても上手いです。そのため、頭の中で状況整理がとても容易ですし、話が複雑になればなるほど、面白味が増していきます。
最後まで読めない展開はハラハラドキドキの連続です。ぜひ読んでみて下さい。
誰か Somebody
- 人気推理小説シリーズ「杉村三郎シリーズ」の1作目
- 全ての謎が綺麗に回収されるため、満足度が高い
- 愛妻家で温厚な主人公・三郎が魅力的
人気推理小説シリーズ「杉村三郎シリーズ」の1作目に当たる作品です。
大企業会長の娘婿である杉村三郎は、同社の広報室で働く温厚な男。ある日、会長のお抱え運転手・梶田が自転車に追突され命を落としてしまいます。その後、梶田の娘姉妹は、逃げた犯人を探す手がかりになると案じ、大切な父の人生を記録した本を出版したいと言い出します。
会長に頼まれて、姉妹に協力することになった三郎ですが、梶田について調査をしていく中で、驚くべき過去が浮き彫りになっていきます。
物語は主人公である三郎の視点から、ひき逃げ事件の犯人を追う展開と梶田の過去を探る展開の2つのストーリーが並走して描かれております。序盤は謎が膨れあがっていく展開が描かれており、ページが進むにつれ、謎が明らかになり事件の全貌が明らかになっていきます。一つ一つの謎に対して、納得できる丁寧な説明が付されるため、読み応えがありますし、読後の満足感が非常に高いです。
とにかく、愛妻家で温厚な三郎が魅力的なのがポイント。血生臭いドロドロとした展開でも、三郎の言動には安心感があるので、終始楽しい気持ちで読める一冊です。
名もなき毒
- 人気推理小説シリーズ「杉村三郎シリーズ」の2作目
- 2つの話の絡め方が凄い
- ホラー系が得意な方にオススメ
人気推理小説シリーズ「杉村三郎シリーズ」の2作目に当たる作品です。
主人公は、大企業会長の娘婿である杉村三郎。同社は、トラブルの絶えないアルバイトの原田いずみを解雇しますが、納得のいかないいずみは、会社から受けたとされる不当な行為をでっち上げ、会社に対して訴訟を起こすと迫ってきます。
会長から対処を命じられた三郎は、いずみの身辺調査のため、私立探偵の北見のもとを訪れるのですが、ひょんなことから巷を賑わす連続無差別毒殺事件で祖父を亡くした女子高生と出会い、事件に首を突っ込んでいきます。
物語は三郎が「いずみの一件」と「毒殺事件の一件」の2つの事象に向き合う形で進んでいきます。2つの話の切り替えがとても自然で違和感がないため、状況の整理が容易で、スラスラと読めてしまいます。そして、一見無関係に思えた2つの話の絡め方が凄い。驚くこと間違いなしです。
そして、表題にもある「毒」が様々登場するのがポイント。不気味で恐ろしい毒の正体に背筋が凍りつきます。ホラー系が得意な方に特にオススメの一冊です。
おすすめ小説7選 作品一覧
宮部みゆきの新刊 / 新作最新情報をチェックしてみよう
青瓜不動 三島屋変調百物語九之続
発売日:2023/7/28 電子書籍:× 文庫本:×
- 「三島屋シリーズ」の第9作目
- 人間の内面に焦点を当てた幅広い作品が収められている
- 心理描写が秀逸で登場人物に感情移入出来る
江戸にある袋物屋「三島屋」を舞台に、店を訪れた客が聞き手一人だけに不思議な話をする「三島屋シリーズ」の第9作目。
「青瓜不動」「だんだん人形」「自在の筆」「針雨の里」の全4話が収録されています。
人間の心に潜む狂気が露わになる禍々しい話から心温まるほっこりとした話まで幅広い作品が収められています。
初代聞き手であるおちかの出産と二代目聞き手である富次郎の成長が描かれているのが見所。心理描写が秀逸で登場人物に感情移入しながら読み進めることが出来るオススメの一冊です。
ぼんぼん彩句
発売日:2023/4/19 電子書籍:〇 文庫本:×
- 俳句をもとに創作された物語が収められた短編集
- 人間の心に潜む歪んだ狂気が描かれている
- どの話も独特な趣があり読み応え十分
著者が参加する句会で詠まれた俳句をタイトルにして創作された物語が収められた作品集。12編の物語からなる短編集です。
ホラーやSF、ほっこり等様々なジャンルの物語が含まれていますが、人間の心に潜む歪んだ狂気を描いた作品が多いのが印象的です。ぞっとする恐怖を幾度となく味わいながら、意外な展開を見せるストーリーが面白くて読み始めたら止まらないです。
わずか17音の俳句からイマジネーションを膨らませ、魅力あふれるストーリーを作り上げる宮部みゆきの想像力に脱帽の一冊です。短編集のため一つ一つの物語は短いですが、どの話も独特な趣があり読み応え十分です。
よって件のごとし 三島屋変調百物語八之続
発売日:2022/7/27 電子書籍:× 文庫本:×
- 「三島屋シリーズ」の第8作目
- 表題作はゾンビを彷彿とさせる物語
- ハラハラドキドキの緊迫感あふれる展開
江戸にある袋物屋「三島屋」を舞台に、店を訪れた客が聞き手一人だけに不思議な話をする「三島屋シリーズ」の第8作目。「賽子と虻」「土鍋女房」「よって件のごとし」の3編が収められています。
前作までは、聞き手は三島屋で働くおちかでしたが、おちかが身ごもったことを契機に、本作では三島屋の次男・富次郎が聞き手となっています。
表題作「よって件のごとし」はゾンビを彷彿とさせる物語。中ノ村にある池がもう一つの世界と繋がります。そこは「ひとでなし」という化け物が蔓延る恐ろしい世界。そこから助けを求めて一人の少女がやってきたことで、中ノ村の住人が立ち上がります。
ハラハラドキドキの緊迫感あふれるストーリーに一気に引き込まれる物語です。「ひとでなし」の魔の手が迫る人々を次から次へと助け出す勇敢な中ノ村の住人がとにかくカッコよくワクワクしながら読み進めることが出来ます。
挿話として三島屋の近況が描かれているのも良いアクセントになっています。おちかの妊娠の行方や三島屋の長男・伊一郎が帰ってきたり三島屋を巡る様々な変化がとても面白くて、これからどうなっていくのか先が気になって仕方がない一冊です。
宮部みゆきの作品を読んでみよう
宮部みゆきのおすすめ小説をランキング形式で紹介いたしました。いかがでしたでしょうか。
今回は代表作から最新作まで厳選して紹介しましたが、他にも多くの人気作品があります。
昔の作品は電子書籍化されているものは少ないですが、文庫化はほとんどの作品がされているため、気軽に面白いと思った一冊を手に取り、読んでみてはいかがでしょうか。お気に入りの作品がきっと見つかるはずですよ。
この記事を書いた人
東京都文京区在住のけんぞうです。
本が大好きで、自分が読んで面白かった本などを中心にWEB編集者として様々な情報を発信しています。
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