特集伊坂幸太郎のおすすめ小説9選 伊坂ワールドを存分に堪能できる作品を紹介します
独特な世界観や爽快な伏線回収が多くの人を魅了し、人気を博している作家・伊坂幸太郎。
しかし、伊坂作品は、ジャンルが多岐に渡るため、興味があってもどこから手を付けていいか分からない人も多いはず。
そこで今回は、伊坂幸太郎の作品をまだ読んだことがない初心者の方向けに、独自におすすめの小説を厳選しランキング形式でまとめてみました。
どれも人気の作品で大変面白いので、ぜひ読んでみて下さい。
『伊坂幸太郎』 とは
経歴や受賞歴
1971年千葉県生まれの伊坂幸太郎は、東北大学を卒業後、2000年に『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞を受賞し作家としてデビューしました。
その後も、2004年に『アヒルと鴨のコインロッカー』で吉川英治文学新人賞を受賞、2008年に『ゴールデンスランバー』で本屋大賞と山本周五郎賞を受賞するなど数多くの人気作品を発表し、人気作家としての地位を不動のものとしています。
作品の特徴や魅力
伊坂幸太郎の魅力の一つと言えば、伊坂ワールドとも称される独特な世界観です。読み手は作品を読み進める内に自然とその世界観にのめり込み、魅了されます。
また、作品の随所に散りばめられた伏線や登場人物の軽妙なやり取り、心地よく進んでいくストーリー展開といった点も大変魅力を感じさせます。
おすすめ小説 9選
ゴールデンスランバー
- 首相暗殺の濡れ衣を着せられた男の逃亡劇
- 迫りくる追手の緊張感が凄い
- 登場人物の会話が心地良い
山本周五郎賞と本屋大賞を受賞した大ヒット小説です。
時の首相が暗殺され、国家権力の陰謀により、犯人に仕立て上げられた青年・青柳雅春。青柳は迫りくる追手から必死に逃れながらも、彼を陥れようとする陰謀の正体に迫っていきます。
メディアや大衆心理の力で、既成事実が作り上げられていく恐怖と追手が徐々に迫ってくる緊張感が凄まじいです。描写が細かく、フィクションとは思えないリアリティを感じます。
ただ、緊張感の中にも随所に笑いがあるため、読んでいてとても面白いです。物語には様々な人物が登場しますが、登場人物のやり取りがとても軽妙で思わず笑ってしまいます。また、各登場人物の心理描写がとても丁寧に描かれていて、各自が信念を持ち、その信念に従って行動する姿が美しいです。
語り手の視点や時系列が切り替わりながら、物語は進みますが、その切り替えがとても巧みです。全く頭が混乱しませんし、話が複雑になればなるほど、面白味が増していきます。そして、伏線の回収は圧巻です。至る所に散りばめられた伏線が一気に回収され、一本の線となっていく展開はお見事。全く次が読めない展開に、本を読む手が止まらない一冊です。
グラスホッパー
- 超人気シリーズ『殺し屋シリーズ』の1作品目
- 3人の殺し屋のキャラクターが魅力的
- 伏線回収が見事
大人気シリーズである『殺し屋シリーズ』の第1作目で、最高傑作とも称される作品です。
殺し屋業界で暗躍する3人の殺し屋の物語で、1人目は妻を殺され、妻への復讐のために殺し屋業界に足を踏み入れた「鈴木」。鈴木は妻殺しの仇が「押し屋」と呼ばれる殺し屋に暗殺される瞬間を目撃します。
2人目は、背が高く「押し屋」との過去の因縁にケリをつけようとする「鯨」。3人目は、大きな野望を抱き殺し屋業界で暴れまくるナイフ使いの若者「蝉」。物語は、3人が「押し屋」なる人物を追う展開で進んでいきます。
3人の視点が入れ替わりながら進んでいく物語は、テンポが良く、読んでいて飽きないです。ストーリーとしても面白く、色んな仕掛けや伏線回収があり、どんどん引き込まれていきます。
そして、何より3人のキャラクターが個性的で魅力的です。常人には到底理解できない思考回路をしている半面、人間味あふれる部分も持ち合わせており、その対比が絶妙なバランスで描かれているのが、とても面白いです。
3人の軽快な台詞回しも魅力の一つで、殺しという重いテーマを扱っていながら、晴れやかな気持ちで読めるのは、その点によるところが大きいと思います。おすすめの一冊です。
重力ピエロ
- 連続放火事件の謎に迫る兄弟を描いたミステリー小説
- 遺伝子の繋がりを超越した家族愛が美しい
- 印象に残るフレーズが多い
連続放火事件の謎に迫る兄弟を描いたミステリー小説。直木賞候補にノミネートされ、2009年には映画化もされたベストセラー小説です。
仙台の街で起こる連続放火事件。現場の近くには必ず奇妙なグラフィティアート(落書き)が描かれています。過去に辛い記憶を抱える泉水と春の兄弟は、事件の謎解きに乗り出すのですが、徐々に放火と遺伝子との奇妙なリンクが明らかになっていきます。
「春が二階から落ちてきた」と言う印象的なフレーズで始まる当作品は、謎の連続放火事件とグラビティアートを巡る謎解きの部分と、春の出自や家族愛に関する部分が大きなテーマとなって物語が展開していきます。
放火や遺伝子など扱っているテーマは重苦しいのですが、軽妙な語り口で物語は進行していくため、その重さを感じさせず、とても読みやすいです。
遺伝子の繋がりを超越した家族愛で困難を乗り越えていく様はとても感動的です。「楽しそうに生きていれば、重力なんて消してしまえるんだよ」など心に刺さるフレーズが多い所もポイントが高いです。家族愛に溢れたおすすめの一冊です。
アヒルと鴨のコインロッカー
- 吉川英治文学新人賞を受賞した珠玉のミステリー小説
- 予想できないストーリー展開で、ラストまで気が抜けない
- 登場人物が魅力的で、やり取りが面白い
吉川英治文学新人賞を受賞した珠玉のミステリー小説。映画化もされた人気の作品です。
現在と2年前の時系列が交互に切り替わる形式で物語は展開していきます。現在は、椎名という大学生の物語で、引っ越し先のアパートの隣人・河崎に「本屋で広辞苑を盗まないか」と誘われるところから話が進んでいきます。一方、2年前の物語はペットの惨殺事件を巡る物語が展開します。
現実と非現実が絶妙に交じり合った何ら関連性を感じない不思議な世界観の2つの物語。終盤にかけて、2つの話が徐々に繋がってきて真相が明らかになっていくのですが、予想だにしない意外な展開にワクワクが止まりません。伏線の回収も見事で、物語全体の構成力の高さを感じる一冊です。
また、登場人物のキャラクターがとても魅力的です。思わず笑ってしまうようなユーモラスな会話が随所に含まれながら、話が展開していくため、重たい展開もありますが、楽しい気持ちでテンポよく読み進められます。
オーデュボンの祈り
- 伊坂幸太郎ワールドを存分に味わえるデビュー作であるミステリー小説
- 不思議な島の謎が徐々に明らかになる展開が圧巻
- 思わず唸ってしまうほど、見事な伏線回収
伊坂幸太郎のデビュー作であるミステリー小説。伊坂幸太郎の原点にして、伊坂幸太郎ワールドを存分に味わえる作品です。
コンビニ強盗未遂事件を起こし逃走していた主人公の伊藤がたどり着いた場所は、外部との交流を持たない孤高の島“荻島"。
嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。妙な人間ばかりが住んでいる荻島ですが、次の日、カカシが無残にもバラバラで殺され、頭を持ち去られてしまいます。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのでしょうか。
物語は、伊藤が島を巡り島民と交流する中で、不思議な出来事が次から次へと起こる形で淡々と進んでいきます。島の人たちはとても優しく暖かい雰囲気をまといつつも、何を考えているのか分からない不気味さも兼ね備えており、作品全体が独特で不思議な世界観で包まれています。
序盤はとてもゆっくりと話が進んでいきますが、徐々に荻島の謎が少しずつ解き明かされていく展開がとても面白いです。伏線が綺麗に回収されていく展開は圧巻、ワクワクしながら読み進めること間違いなしです。
死神の精度
- 死神の視点から見た人間を描く短編小説集
- 死神のキャラクターが魅力的で、思わず笑みがこぼれる
- 笑いあり涙ありの満足度の高い一冊
日本推理作家協会賞 短編部門を受賞した短編小説集。本作は調査対象者の死の可否を判断する死神・千葉の視点で綴られる物語です。千葉が調査対象の人間に接してみて審判を下すまでの1週間に密着し、調査対象者の人生を紐解いていく形で物語は進みます。
死神・千葉のキャラクターがとても魅力的で、死神視点の人間に対する皮肉やユーモアが的確で面白いです。また、人間との会話でピントがズレた発言をしてしまう、まじめな性格の千葉に思わずクスっと笑ってしまいます。
全6話の構成で、6人の人生が描かれていますが、どのエピソードも、それぞれ違った趣があり、テンポよく展開していくため、自然と話に引き込まれます。伏線の張り方・回収がとても上手く、予想だにしてない展開が続くため、続きが気になって仕方がないです。それぞれの話は基本的に独立していますが、所々繋がりがあったり、小技が随所に光る点もポイントが高いです。
死をテーマにしつつも、あまり重さを感じない作品でとても読みやすく、笑いあり涙ありの心温まる一冊です。ぜひ読んでみて下さい。
フィッシュストーリー
- 4つの物語が収められた短編小説集
- 売れないロックバンドが長い年月を経て世界を救う心温まるストーリー
- 3つの時系列が交錯する構成力の高いストーリー
表題作を含む4つの物語が収められた短編小説集。映画化もされている人気の作品です。
どの物語も伊坂幸太郎ならではの独特で不思議な空気感を漂わせるストーリーです。4つの物語は”思いがけない不思議な縁”をきっかけに物語が徐々に動いていく点で共通点があり、それぞれに違った味わいがあり、とても面白いです。
その中でも、なんと言っても表題作が印象的です。ある小説の一説を引用した売れないロックバンドの曲が、30年もの長い年月を超え、様々な人々に影響を及ぼし、世界を救うストーリーです。現在、過去、未来が交錯する形で物語は展開していきます。
それぞれの時代で起こった出来事が、徐々に繋がりを持ち、大きな奇跡を生む展開が素敵で、美しいストーリーに心が温まります。3つの時系列が交錯しますが、各時系列が章で区切られているため、とても読みやすいです。
また、各登場人物の台詞回しがとても心地いいです。ユーモアにあふれていて思わずクスっと笑ってしまいます。短編集のため、とても読みやすくておすすめです。
終末のフール
- 地球滅亡まで3年の世界を描いた短編集
- 登場人物の生き様を通じて、人生を見つめ直すきっかけを与えてくれる
- 心に響くフレーズが多い
『8年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡する。』と予告されてから5年が経過した世界線を舞台に、最後の3年を迎えた人々の生き様を描いた作品。
当初はパニックに陥った人々の暴走もあったが、落ち着きを取り戻した世界で、3年という限られた時間を人々がどういう思考を持ち、どのように生きていくかを章ごとに主人公を変えて描く8話の短編集となっています。
長年子宝に恵まれなかったが、このタイミングで子供ができ産むべきか悩む夫婦や復讐のための殺人を企てる兄弟などの生き方を通じて、読み手に人生を見つめなおすきっかけを与えてくれる作品です。
また、自動販売機のジュースを巡って人が死ぬなど、地球滅亡の混乱の描写として様々な事象が描かれていますが、確かにこんなことが起きても不思議ではないというリアリティがあるため、作品全体を通じてフィクションとは思えない緊迫感があります。
『明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生きかたなんですか?』など心に響くフレーズも多く、読み応え十分の一冊です。
マリアビートル
- 『グラスホッパー』の続編に当たる殺し屋シリーズの2作目
- 新幹線を舞台に殺し屋たちが繰り広げるハラハラドキドキの抗争劇
- 登場人物のキャラクターがユニークで良い
『グラスホッパー』の続編に当たる殺し屋シリーズの2作目。2022年には邦題『ブレット・トレイン』でハリウッド映画化されています。
元殺し屋の「木村」は、息子を重体にさせた「王子」に復讐するため、彼が乗った盛岡行き東北新幹線に乗り込みます。しかし、それは狡猾な王子によって仕組まれた罠だったのです。
一方、裏社会の大物の依頼を受けた殺し屋コンビの「蜜柑」と「檸檬」、とにかく運が悪い殺し屋「天道虫」も同じ新幹線に乗り合わせており・・・。
新幹線という閉鎖空間を舞台に、殺し屋たちが繰り広げるハラハラドキドキの抗争劇。登場人物の視点が適宜切り替わりながら物語は進むため、単調にならず読むペースが全く落ちない魅力があります。
しっかりと回収される伏線がポイント。登場人物のキャラクターもとてもユニークで見どころ満載の一冊です。
おすすめ小説9選 作品一覧
伊坂幸太郎の新刊 / 新作最新情報をチェックしてみよう
777 トリプルセブン
発売日:2023/9/21 電子書籍:× 文庫本:×
マイクロスパイ・アンサンブル
発売日:2022/4/27 電子書籍:〇 文庫本:×
- 音楽フェスで毎年配布されていた小説を書籍化した作品
- パラレルワールドで生きる二人の男を描いた物語
- 伏線の回収が見事
猪苗代湖で2015年から開催されている音楽フェス「オハラ☆ブレイク」において、毎年配布されていた伊坂幸太郎氏の連作短編小説7年分を書籍化した作品。
サラリーマンとして働く男とスパイとして生きる男の二つのパラレルワールドを描いた物語です。全7章から成る物語は、実際の時間の経過と同様、1章ごとに1年の歳月が経過しています。
異世界として並行して描かれる二つの世界線が、思わぬ形で交錯していくのがポイント。誰かの意図しない行動が、もう一方の世界に思いもよらぬ形で影響を与える様がとても面白く、心が温まります。
また、伏線の張り方と回収が見事で、点と点が線になった時のワクワク感がとても心地良いです。最初から最後まで余すことなく楽しめるオススメの一冊です。
伊坂幸太郎の作品を読んでみよう
伊坂幸太郎のおすすめ小説をランキング形式で紹介いたしました。いかがでしたでしょうか。
今回は代表作から最新作まで厳選して紹介しましたが、他にも多くの人気作品があります。
電子書籍化や文庫本化されている作品も多いので、気軽に面白いと思った一冊を手に取り、読んでみてはいかがでしょうか。お気に入りの作品がきっと見つかるはずですよ。
この記事を書いた人
東京都文京区在住のけんぞうです。
本が大好きで、自分が読んで面白かった本などを中心にWEB編集者として様々な情報を発信しています。
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