特集伊岡瞬のおすすめ小説6選 人間の狂気に鳥肌が立つ作品を多数紹介します
人気警察小説シリーズ『真壁刑事シリーズ』を始め、数多くのヒット作を生み出してきた作家・伊岡瞬。
ミステリー小説を中心に、数多くの賞を受賞し、高い評価を得ております。
そこで今回は、伊岡瞬の作品をまだ読んだことがない初心者の方向けに、独自におすすめの小説を厳選しランキング形式でまとめてみました。
どれも人気の作品でとても面白いので、ぜひ読んでみて下さい。
『伊岡瞬』 とは
経歴や受賞歴
伊岡瞬は、1960年東京都出身の小説家です。日本大学を卒業後、広告会社勤務を経て、2005年に『いつか、虹の向こうへ』で横溝正史ミステリ大賞の大賞とテレビ東京賞をW受賞し、小説家としてデビューします。
2014年発表の『代償』は同年、第5回山田風太郎賞候補となり、2016年に啓文堂書店文庫大賞を受賞しています。同賞は、2019年にも『悪寒』で受賞しています。
その他、2020年に『不審者』で第41回吉川英治文学新人賞候補、『痣』で第6回徳間文庫大賞を受賞しています。
作品の特徴や魅力
伊岡瞬作品は、人間の心の闇をあぶり出すようなミステリーが魅力です。
人間の心の汚い部分がおどろおどろしく描かれていて、身の毛がよだつ恐怖感を味わう作品が多いです。
また、興味をそそられる巧みなストーリー展開も魅力です。
一度読み始めると、手を休める隙を与えない引力に吸い寄せられていきます。
おすすめ小説 6選
代償
- 宿命づけられた因縁を描いたサスペンスミステリー
- 読みやすい文章と巧みなストーリー展開
- 伏線回収が見事
2人の幼なじみの宿命づけられた因縁を描いたサスペンスミステリー。
父母と幸せな暮らしをしていた小学5年生の奥山圭輔。だが、母親同士が遠縁という理由で、圭輔の家に度々遊びにくるようになった同学年の浅沼達也の存在が圭輔の人生を狂わしていきます。残忍で邪悪な心を持つ達也により、圭輔の幸せな暮らしは崩れ去り、地獄のような日々を送るはめになってしまいます。
転じて、大人になり弁護士となった圭輔。彼の元に冤罪を晴らしてほしいと逮捕された達也から連絡が入ります。しかし、そこには達也によって巧妙に仕組まれた罠が待ち受けていたのでした。果たして、圭輔は窮地を脱し、達也に鉄槌を下すことが出来るのでしょうか。
前半は少年期の話、後半は弁護士となってからの話の2部構成となっています。前半は、達也の存在が圭輔の暮らしを徐々に蝕んでいく救いがない展開で、胸が締め付けられます。それでも、読みやすい文章と巧みなストーリー展開で、スラスラと読めてしまいます。
後半は、法廷ミステリー要素が強いです。証拠を一つ一つ積み上げていき悪事を暴いていく展開がとても心地いいです。伏線回収も見事で、楽しみながら読み進めることが出来ます。
悪寒
- 謎が謎を呼ぶ長編ミステリ小説
- 謎がどんどん膨れ上がっていく展開が面白い
- 臨場感あふれる法廷シーンが見所
謎が謎を呼ぶ長編ミステリ小説。真壁刑事シリーズの3作目にあたる作品です。
会社の不祥事の責任を取らされ、地方の系列会社へと左遷させられた製薬会社社員・藤井賢一。単身赴任で仕事も家庭も上手くいかない中、妻から一通のメールが届きます。『家でトラブルがありました』。その後、賢一の元に警察から連絡が入り、妻が殺人容疑で逮捕されたことを知らされます。被害者は賢一の会社役員で、賢一に左遷を言い渡した張本人でした。賢一の単身赴任中に、何が起こったのでしょうか。
序盤は謎がどんどん膨れ上がっていきます。本当に妻が殺したのか。それとも、誰かをかばっているのか。登場人物の心の内が読めない緊迫感あふれる展開に、読む手が止まらないです。
そして、徐々に浮かび上がってくる事件の全貌。伏線を回収しながら二転三転する展開は、全く先が予測できません。誰が犯人なのか気になって最後まで駆け抜けるように読んでしまいます。
臨場感あふれる法廷シーンが見所。伊岡氏の多彩な筆致が、まるで当事者として法廷に座っているかのような緊張感を生み出しています。場面もテンポよく移り変わっていくため、最初から最後まで楽しめる一冊です。
本性
- 謎の女を巡るサスペンスミステリー
- 点と点が繋がり謎が一気に明らかになる怒涛の展開
- 『本性』が明らかになったとき、大きな衝撃が待っている
謎の女を巡るサスペンスミステリー。真壁刑事シリーズの4作目にあたる作品です。
謎の美女『サトウミサキ』に惚れ込んだ男達。しかし、次第に彼女の不穏な行動が見え始め、男達は破滅の道を辿っていきます。一体彼女は何者なのでしょうか。
一方、ある焼死事件を追っていた2人の刑事は、ふとしたことから事件とサトウミサキとの接点を突き止め、15年前に遡る大きな闇を暴いていきます。
物語は、各章ごとに、サトウミサキと接点を持つ人物の視点から進むます。各章の話は、サトウミサキが登場する点では共通点がありますが、その他の関係性は全く見えてきません。
しかし、後半に描かれる2人の刑事の視点で、物語は大きく動いていきます。登場人物の接点やサトウミサキの目的など、点と点が繋がり一気に明らかになっていく怒涛の展開は圧巻です。先が気になってページをめくる手が止まりません。
タイトルにある通り、女の『本性』がポイント。それが明らかになったとき、大きな衝撃が待っています。
視点が入れ替わっていく難しい構成でありながら、とても読みやすい一冊です。
不審者
- 家族を侵食する謎の男を描くサスペンスミステリー
- 男が徐々に迫ってくる恐怖を感じる
- ラストに待ち受けるどんでん返し
家族を侵食する謎の男を描くサスペンスミステリー。
校閲の仕事をする里佳子は夫、息子、義母の4人家族で平凡な日々を過ごしていました。そんな折、夫が21年前に生き別れた兄なる人物を突然連れて来ます。
里佳子の家に居座り、どんどん家族との距離を詰めてくる謎の男。次第に、里佳子の中で不信感が膨れ上がっていきます。そして、折しも彼が現れて以来、里佳子の身の回りでは不審な事件が頻発するのでした。
里佳子の視点で進む本作。里佳子と同じ目線から兄なる人物への警戒心が膨れ上がっていき、徐々に迫ってくる恐怖を感じます。謎の男はいったい誰なのか、どんどん物語に引き込まれていきます。
そして、ラストに待ち受けるどんでん返し。思わず声が出てしまうほどの衝撃があります。途中から感じていた違和感が一気に解消されるため、爽快感があります。
痣
- 連続猟奇殺人の謎を追う警察小説
- 事件の全貌が一気に見えてくる展開は圧巻
- 後輩刑事とのコンビが良い
連続猟奇殺人の謎を追う極上の警察小説。
妻を殺された刑事・真壁は退職が間近に迫ったある日、女性の冷凍殺人事件の捜査に駆り出されます。そこで真壁は、被害者の胸に死んだ妻の痣と似たような傷が刻まれているのを目にします。
妻を殺したとされる男は既に事故死したはず。激しく動揺する真壁。やがて、次から次へと殺人事件は連鎖していきます。妻を失い刑事としての情熱を失いかけていた真壁の魂に再び火が灯ったとき、真壁は事件解決を固く誓うのでした。
真壁が後輩刑事の宮下とコンビを組んで事件解決に迫っていきます。事件の行方や真犯人が中々見えてこない展開はとても緊迫感があり、面白いです。
そして、連続殺人の真相、死んだ妻との関連性、過去に失踪した刑事との関連性などが一気に繋がり、事件の全貌が見えてくる展開は圧巻。予測出来ない展開でありながら、全ての辻褄があっているため、満足度が非常に高いです。
真壁と宮下のコンビがとても良いのがポイント。頼りなかった宮下が徐々に成長し、立派な相棒になっていく展開はとても熱いです。
仮面
- 残酷な悪人を描き切ったクライムサスペンス
- 各登場人物がどう絡み合っていくのかハラハラドキドキの展開が面白い
- 次第に登場人物の仮面が剝がれていくのがポイント
残酷な悪人を描き切ったクライムサスペンス。
読字障害を乗り越えTVで評論家として活躍する三条。しかし、彼の経歴には不可解な部分があり、時折垣間見える不穏な空気感に秘書の菊井は違和感を感じていました。
時を同じくして、パン店経営者の妻が白骨死体で発見され、警察が捜査に動き出します。やがて、行方不明となっている別の女性との繋がりが明らかになり、三条との接点も浮かび上がってきます。
様々な人物の視点から物語は進んでいきます。各登場人物にどんな繋がりがあり、どう絡み合っていくのか先が気になるハラハラドキドキの展開が面白いです。
タイトルにある通り、次第に登場人物の仮面が剝がれていくのがポイント。仮面の裏に潜んでいた本性は鳥肌の連続でラストまで気が抜けません。
おすすめ小説6選 作品一覧
伊岡瞬の新刊 / 新作最新情報をチェックしてみよう
白い闇の獣
発売日:2022/12/6 電子書籍:〇 文庫本:〇
- 少年犯罪と少年法の在り方が主題の作品
- 誰が復讐をしているのか・復讐の果てに何があるのか先が気になる
- 確かな希望が描かれている点に救いがある
少年犯罪と少年法の在り方が主題の作品。
小学6年生の少女・朋美が殺害され、15歳の少年3人が逮捕されます。しかし、少年法に守られた彼らへの処罰はあまりに軽く、数年の刑期で出所を果たし再び悪行を繰り返します。
そんな折、犯人の1人が転落死する事件が発生。朋美の父親・俊彦が行方不明であることから、俊彦による復讐の線を疑い警察は捜査を始めますが・・・。
物語は朋美の両親、朋美の元担任の香織、フリーライターの秋山を軸に様々な人物の視点で進んでいきます。誰が復讐をしているのか、復讐の果てに何が待っているのか先が気になる展開に一気に引き込まれます。
卑劣な行為を繰り返す少年たちへの怒りがこみ上げると同時に、被害者の悲痛を思うと胸が痛くなり読み進めるのがとても辛くなります。ただその中でも、確かな希望が描かれている点に救いがあり、爽やかな読後感がある一冊です。
朽ちゆく庭
発売日:2022/6/3 電子書籍:〇 文庫本:×
- それぞれが抱える秘密が家族を崩壊へと導くサスペンス
- 家族が崩壊へと向かう底知れぬ恐怖感がある
- 二転三転するストーリーが面白い
それぞれが抱える秘密が家族を崩壊へと導くサスペンス。
新居に引っ越してきた3人家族は、一見どこにでもいる平凡な家族に見えてそれぞれが秘密を抱えています。父は会社で不正が発覚し自宅謹慎となっており、母は職場で上司と不倫、中学生の息子はいじめの対象となり不登校が続いています。
そんな折、家の中から少女の遺体が発見されます。そこから、ギリギリのバランスで体を成していた家族は一気に崩壊へと向かっていくのでした。
冒頭から、3人の言動の裏に本音が見え隠れし不穏な空気感が満ち溢れている本作。ゆっくりとしかし確実に、家族が崩壊へと向かっている底知れぬ恐怖感があります。
そして、少女の遺体が発見されたことで、物語は一気に加速していきます。ミステリー要素も加わり、一体だれが彼女を殺したのか、二転三転するストーリーからは目が離せません。
伊岡瞬の作品を読んでみよう
伊岡瞬のおすすめ小説をランキング形式で紹介いたしました。いかがでしたでしょうか。
今回は代表作から最新作まで厳選して紹介しましたが、他にも多くの人気作品があります。
電子書籍化や文庫本化されている作品も多いので、気軽に面白いと思った一冊を手に取り、読んでみてはいかがでしょうか。お気に入りの作品がきっと見つかるはずですよ。
この記事を書いた人
東京都文京区在住のけんぞうです。
本が大好きで、自分が読んで面白かった本などを中心にWEB編集者として様々な情報を発信しています。
ぜひ、本の出品をお待ちしております。