特集恩田陸のおすすめ小説11選 多くの賞を受賞した作品から最新作まで幅広く紹介します
直木賞や2回の本屋大賞など数多くの受賞歴を有し、多くの人に愛される作家・恩田陸。
青春やSFなど取り扱うジャンルは多岐にわたり、ドラマや映画化された作品もとても多いです。
そこで今回は、恩田陸の作品をまだ読んだことがない初心者の方向けに、独自におすすめの小説を厳選しランキング形式でまとめてみました。
どれも人気の作品でとても面白いので、ぜひ読んでみて下さい。
『恩田陸』 とは
経歴や受賞歴
恩田陸は、1964年青森県出身の小説家です。早稲田大学教育学部を卒業後、4年ほど生命保険会社に勤務したのち、1991年に『六番目の小夜子』が日本ファンタジーノベル大賞最終候補作となり、翌1992年の刊行をもって作家デビューを果たします。
その後、2004年に発表した『夜のピクニック』が本屋大賞と吉川英治文学新人賞を受賞し、大ヒットを記録します。
2006年には『ユージニア』で日本推理作家協会賞を受賞したほか、2007年には『中庭の出来事』で山本周五郎賞を受賞、そして、2017年には『蜜蜂と遠雷』で直木賞と本屋大賞をダブル受賞しています。
作品の特徴や魅力
恩田陸作品の魅力は、表現力豊かな情景描写にあります。文面から情景が自然と頭に浮かんできて小説の世界観にスッと入り込むことが出来ます。
また、心理描写がとても繊細で、登場人物が生き生きと描かれているのも特徴の一つです。
『夜のピクニック』や『蜜蜂と遠雷』など、少年少女を物語の中心に据え、彼らが様々な刺激を受けながら成長していく姿がとても美しく描かれている作品が多いです。
おすすめ小説 11選
夜のピクニック
- 高校の伝統行事を舞台にした青春小説
- 登場人物の心の機微や心情の変化を繊細に描いた作品
- 移ろいゆく情景の描写が多彩
高校の伝統行事を舞台にした青春小説。吉川英治文学新人賞と本屋大賞をダブル受賞し、映画化もされた恩田陸の最高傑作です。
高校生活の最後を飾るイベント「歩行祭」。それは24時間かけて80kmの道のりを歩き続ける高校の伝統行事。甲田貴子はずっと意識しながらも、話をすることが出来なかったクラスメイト西脇融のことで密かな思いを抱きながら、歩行祭に臨んだのでした。
二人の主人公を中心に登場人物の心の機微や心情の変化を繊細に描いた作品。多感な高校生の様々な感情が交錯する様がとても甘酸っぱくて美しいです。
移ろいゆく情景の描写が多彩で、時間の経過を感じるのがポイント。小説の世界に没入し、まるで登場人物と一緒に歩いているかのような感覚で読み進めることが出来ます。そして、読了後には、登場人物と一緒にゴールしたかのような爽快感がたまらないです。
ノスタルジックな気持ちで満たされる青春が凝縮された作品をぜひ読んでみて下さい。
蜜蜂と遠雷
- 若手ピアニストたちの青春を描いた群像劇
- 天才たちがお互いに刺激し合い成長していく姿が美しい
- 音楽が文面から聞こえてくる圧倒的な表現力
ピアノコンクールを舞台に若手ピアニストたちの青春を描いた群像劇。直木賞と本屋大賞をダブル受賞した恩田陸の代表作の一つです。
3年ごとに開催される芳ヶ江国際ピアノコンクール。多くの優勝者が後に大きな飛躍を遂げたことで、今回はとても多くの注目を集めています。
自宅にピアノすらない16歳の少年・風間塵、天才少女として将来を嘱望されていながら母の突然の死のショックでピアノが弾けなくなった・栄伝亜夜、楽器店勤務のサラリーマンで妻子がいる28歳の高島明石、フランスから渡米し名門音楽大に在学中の優勝候補・マサル・カルロス・レヴィ・アナトール。
4人をはじめ、数多くの天才たちによる熱き戦いが幕を開けます。
物語は、主に4人にスポットライトを当て進んでいきます。天才たちがお互いに刺激し合いながら、自らの音楽そして自分自身と向き合い、成長していく過程がとても美しいです。移ろいゆく心情がとても丁寧に描かれているため、自然と感情移入してしまいます。
また、天才のみならず凡人の視点が描かれているのが、アクセントになっていてとても良い味を出しています。
音楽が文面から聞こえてくるかのような圧倒的な表現力で一気に引き込まれる作品です。登場人物と一緒になって時に興奮し、時に涙を流し、時に喜びに浸れる心揺さぶられる一冊です。
ネバーランド
- 少年たちの光と闇を描いた青春小説
- 明るく盛り上がれる少年たちの姿に希望を感じる
- 作品全体を包む暖かい雰囲気が心地良い
少年たちの光と闇を描いた青春小説。テレビドラマ化もされた人気の作品です。
舞台は、とある田舎にある進学校の男子校。冬休みを迎えほとんどの寮の生徒が帰省する中、それぞれが抱える事情により3人の少年が寮に残っていました。
そこに乱入してくる1人の少年。彼もまた3人と同じように複雑な事情を抱えていたのでした。
かくして、年末年始の7日間を共に過ごすことになった4人は、あるゲームをきっかけにして、それぞれが抱える過去やトラウマを語りだすのでした。
4人が告白する過去やトラウマはかなり重い内容です。それでも4人が、お互いの抱える苦悩を共有し、真剣に向き合いながら、友情を深めていく姿がとても美しく描かれています。それぞれの苦悩を知っても、4人の関係性が変わらないで明るく盛り上がれるところに希望を感じてとても素敵です。
作品全体を包む暖かい雰囲気がとても心地良いです。巧みな情景描写に誘われて小説の世界観にスッと入り込み、4人とともに時を過ごしているかのような感覚を味わえます。
祝祭と予感
- 『蜜蜂と遠雷』の前後を描いたスピンオフ短編小説集
- 希望に満ちた爽やかな作品
- 登場人物が生き生きとしている
大ベストセラー作品『蜜蜂と遠雷』の前後を描いたスピンオフ短編小説集です。
亜夜、マサル、塵の3人がかつての恩師の墓参りで再会する話、審査員として再会したナサニエルと三枝子の若き日の出会いの話、コンクール課題曲「春と修羅」の作成秘話など全6話が収録されています。
『蜜蜂と遠雷』で描かれたハラハラドキドキの熱戦劇に比して、終始穏やかなトーンで綴られた本作。
これから未来に向かって羽ばたこうとする若者たちの内に秘めたる熱い闘志を感じる作品で、希望に満ちた爽やかな作品です。
短編でありながら、どの話もとても濃密で読みごたえがあります。登場人物が生き生きとしており、小説の世界を駆け回る姿がとても好感を持てます。
『蜜蜂と遠雷』が面白かったという方には、ぜひ読んでいただきたい一冊。再びあの心地よい世界観を堪能できます。
麦の海に沈む果実
- 不気味な空気感に包まれた学園ミステリー
- 不気味かつ幻想的な学園の空気感に浸りながら読める
- 登場人物がとても魅力的
不気味な空気感に包まれた学園ミステリー。
舞台は、「3月以外の転入生は破滅をもたらす」という言い伝えがある湿原に囲まれた全寮制の学園。
2月の終わりに転入してきた理瀬は、不吉な存在として周囲から疎まれてしまいます。やがて、言い伝えは現実のものとなり、次々と不可解な事件が発生してしまうのでした。
謎が謎を呼ぶ展開、そしてその謎を解き明かしていく展開がとても面白いです。情景描写が繊細で、不気味かつ幻想的な学園の空気感に浸りながら読み進めることが出来ます。
また、登場人物がとても魅力的です。思春期特有の多感で揺れ動きやすい心情が美しく描かれていて、小説の世界観に引き込まれます。
チョコレートコスモス
- 演劇の世界に身を投じた2人の天才少女を描いた作品
- 生の演劇を見ているかのような臨場感に圧倒される
- 様々な人物にスポットライトが当たっており見どころ満載
演劇の世界に身を投じた2人の天才少女を描いた作品。
幼いころから演劇の道を歩み、今では天才と称される若手女優の響子。対して、大学から演劇を始めたばかりだが、天性の才能を持つ飛鳥。
2人は伝説の映画プロデューサー・芹澤が開催する大規模なオーディションの舞台上で出会います。そして、若き才能の熱くて美しい熱戦が幕を開けます。
生の演劇を見ているかのような臨場感に圧倒される作品。舞台上で繰り広げられる2人の応酬は圧巻で、感動で心が揺さぶられます。
視点が切り替わりながら、オーディションに関わる各登場人物の過去や背景がしっかりと深堀りされているのがポイント。2人のみならず様々な人物にスポットライトが当たっており、見どころ満載の一冊です。
三月は深き紅の淵を
- 謎に包まれた一冊の本を巡る4つのミステリー
- それぞれの物語に違った趣があり面白い
- 読書好きの方にオススメの一冊
謎に包まれた一冊の本を巡る4つのミステリー。
趣味が読書という理由で会社の会長の屋敷に招かれた主人公。そこで彼が聞いたのは、屋敷内にあるはずなのに10年以上探しても見つからない『三月は深き紅の淵を』という1冊の本の存在。
それは、持ち主がたった一人にたった一晩だけ貸すことが許された謎に包まれた本なのでした。
本作を構成する4つの物語は『三月は深き紅の淵を』がキーワードになっているものの、切り口が全く異なっており、独立した物語になっています。
それぞれの物語に違った趣があり、とても面白いです。短編でありながら話がしっかりとまとまっているため、満足感も非常に高いです。
登場人物が読書好きばかりなので、読書好きの方にオススメしたい一冊です。
ドミノ
- 事件が次から次へと繋がっていくドタバタコメディ
- 疾走感あふれるストーリー展開
- 登場人物一人一人の個性がはっきりしていて良い
ドミノのように事件が次から次へと繋がっていくドタバタコメディ。
1億円の契約書を運ぶ生保会社社員、ミュージカルのオーディションを受ける子役、誤って爆弾入りの紙袋を手に取ってしまう俳句好きの老人、別れ話をする男女、などなど。
それぞれの事情を抱える総勢30人足らずの人たち。東京駅を舞台に、彼らの事情は思わぬ形で交差し、ドミノのように連鎖していくのでした。
視点がどんどん入れ替わりながら、疾走感あふれるストーリー展開で進んでいく本作。数多くの登場人物の事情が重なり、大きな問題へと発展していく展開がとにかく面白いです。
また、色んな方向性の物語が展開されますが最後にはしっかりと一点に収束するので、読後の満足感が非常に高いです。
登場人物が多いながら、一人一人しっかりと人物像が作り込まれているのがポイント。各人物の個性や特徴がはっきりしていてとても良いです。憎めない人物ばかりで、爽やかに楽しい気持ちで読める一冊です。
灰の劇場
- 恩田陸自身が主人公の異色の作品
- 過去と現在・現実と小説が入り混じった複雑な構成
- 40代の悩みや葛藤がとても繊細に描かれている
恩田陸自身が主人公の異色の作品。
大学時代の同級生で同居していた40代の女性2人が橋から投身自殺したという新聞記事が頭からずっと離れなかった小説家の私は、20年後この事件を題材に小説を書き始めます。
本作は、①小説家の私が投身自殺の記事を題材に小説を書くまで②小説で描かれる2人の中年女性③小説が舞台化される現在 の3つの物語が並行して描かれています。
過去と現在・現実と小説が入り混じった複雑な構成がとても面白いです。小説の中を旅しているかのような不思議な感覚に陥ります。
また、もう若くはなく確実に衰えを感じる40代の悩みや葛藤がとても繊細に描かれています。何故、彼女たちは死を選択したのか。それを知った時、大きく心を揺さぶられます。
愚かな薔薇
- 吸血鬼を題材としたSFファンタジー
- 設定が細部まで作り込まれた世界観が良い
- 主人公の揺れる心情が丁寧に描かれているのがポイント
吸血鬼を題材としたSFファンタジー小説。
4年ぶりに母方の故郷・磐座を訪れた14歳の少女・奈智。そこでは子供たちを集めた2か月に及ぶキャンプが開かれており、奈智も参加することになります。
やがて奈智は、キャンプの目的が外界へと渡る「虚ろ舟乗り」になるための適性を見極めるためのものであることを知ります。
次第に変質していく子供たちの体。それは、虚ろ舟乗りになるためには避けられないものでした。変質体になれば、食べ物もほとんどいらなくなり、年を取らない体となるからです。
その一方、一定期間他人の血を飲まないと死んでしまうため、奈智は困惑するのでした。
非現実的な世界観でありながら設定が細部まで作り込まれているため、違和感や矛盾点を感じず、最後までワクワクしながら楽しめる作品です。
ストーリーもテンポよく進んでいくため、中毒性があり、読み始めると一気に読んでしまいます。
奈智の揺れる心情が丁寧に描かれているのがポイント。変質を迫られた奈智がどういった決断をするのか目が離せません。
木洩れ日に泳ぐ魚
- ミステリー要素を含んだ心理サスペンス小説
- 2人の掛け合いのみで物語は進んでいく
- 情景描写の表現力が非常に高い
謎を解いていくミステリー要素を含んだ心理サスペンス小説。恋愛小説の一面も併せ持つ独特な小説です。
舞台はアパートの一室。明日は別れゆく男女が最後の一夜を共に過ごそうとしています。何気ない会話は、次第にお互いの疑念を探りあう展開になっていき、やがて、過去のある事件や二人の関係性の真実に迫っていくのでした。
およそ10ページ前後の章ごとに話し手の視点が切り替わり、男女の掛け合いで物語は進んでいきます。
一夜限りの2人だけの掛け合いというシンプルな設定ながら、話をどんどん広げていき読者を引き込んでいく著者の筆力は見事です。掛け合いの過程で徐々に明らかになっていく真実は驚きの連続で、常に緊張感を保ちながら最後までドキドキしながら読み進めることが出来ます。
また、情景描写の表現力が非常に高いです。アパートの一室や過去の回想場面の情景を容易にイメージ出来るためとても読みやすいです。
おすすめ小説11選 作品一覧
恩田陸の新刊 / 新作最新情報をチェックしてみよう
夜果つるところ
発売日:2023/6/26 電子書籍:〇 文庫本:×
- 恩田陸の小説『鈍色幻視行』の作中作
- 終始怪しい空気感に包まれた一冊
- 『鈍色幻視行』とセットで読むのがおすすめ
恩田陸の小説『鈍色幻視行』の作中で、映像化しようとするたびに死人が出る<呪われた>小説として登場した同名の小説を作品化したもの。
昭和初期、山間の遊郭「墜月荘」で暮らす「私」は複雑な事情を抱えており、3人の母親がいます。
ある時、墜月荘に出入りする男達の宴会に迷い込んでしまった「私」は数々の惨劇を目の当たりにし、時代の大きなうねりに飲み込まれていってしまうのでした。
終始、怪しい空気感が作品全体を覆いながら物語は進んでいきます。「私」と3人の母との関係性や客である男達に秘められた謎など新たな事実がどんどん明らかになる展開がとても面白いです。
男達が巻き起こす様々な騒乱が一つの事件に繋がるのがポイント。『鈍色幻視行』とセットで読むのがおすすめの一冊です。
鈍色幻視行
発売日:2023/5/26 電子書籍:〇 文庫本:×
- 一冊のいわく付きの小説の謎に迫っていく物語
- 個性的な人物が次から次へと現れる展開が魅力的
- 主人公が変わっていく過程が丁寧に描かれているのが印象的
一冊のいわく付きの小説の謎に迫っていく新感覚の物語。
映像化を試みるたびに死人が出て何度も頓挫する<呪われた>小説『夜果つるところ』。小説家の蕗谷梢は、この呪われた小説を題材に執筆を決意し、関係者が一堂に会する2週間の豪華客船の旅に夫・雅春とともに参加します。
関係への取材を通して、小説『夜果つるところ』、そして正体不明の著者・飯合梓の謎に迫っていく梢。果たして、旅の終わりにどんな結論に梢は達するのでしょうか。
関係者一同が自由に小説にまつわる考えや思い出を語らいあった後、各人に個別インタビューを行う形で物語は進んでいきます。個性的な人物が次から次へと現れる展開がとても魅力的です。
各人が抱える思いが明かされていくにつれ、梢と雅春に少しずつ影響を与えていくのが印象的です。ミステリーのようなホラーのような独特な空気感がとても心地良い一冊です。
恩田陸の作品を読んでみよう
恩田陸のおすすめ小説をランキング形式で紹介いたしました。いかがでしたでしょうか。
今回は代表作から最新作まで幅広く紹介しましたが、他にも多くの人気作品があります。
電子書籍化や文庫本化されている作品も多いので、気軽に面白いと思った一冊を手に取り、読んでみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人
東京都文京区在住のけんぞうです。
本が大好きで、自分が読んで面白かった本などを中心にWEB編集者として様々な情報を発信しています。
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