特集高杉良のおすすめ小説8選 経済小説の巨匠の作品を読んでみよう
経済小説の巨匠といわれ、数多くの重厚な作品を生み出してきた作家・高杉良。
映画やドラマ化された作品が多いことでも有名です。
そこで今回は、高杉良の作品をまだ読んだことがない初心者の方向けに、独自におすすめの小説を厳選しランキング形式でまとめてみました。
どれも人気の作品でとても面白いので、ぜひ読んでみて下さい。
『高杉良』 とは
経歴や受賞歴
高杉良は1939年東京都出身の小説家です。大学を中退後、業界紙の『石油化学新聞』に入社し、編集長まで務めます。
しかし、急性肝炎で入院し、会社に対して負い目を感じていたことや、友人からの薦めもあり、小説家としての道を志すようになります。
その後、1975年に『虚構の城』で作家として、デビューします。
同作は、実在する企業をモデルにしたリアリティが大きな評判を呼び、一躍人気作家の仲間入りを果たします。
それ以後も、数多くの重厚な経済小説を生み出しており、経済小説の巨匠として知られる存在です。
作品の特徴や魅力
高杉良作品は、等身大の企業戦士を描いたリアリティがとても魅力的です。
会社内外の理不尽や圧力に振り回されながらも、それに立ち向かっていく主人公の姿が描かれることが多く、主人公に感情移入し
応援しながら、読める楽しさがあります。
おすすめ小説 8選
不撓不屈
- 国税局に戦いを挑むノンフィクション作品
- 国家権力の圧力にも屈しない主人公がカッコイイ
- 自分の働き方と向き合うきっかけになる
申告システムとして有名なTKC創設者の飯塚氏を題材としたノンフィクション小説です。
経営基盤が脆弱な中小企業を支援するため、税理士・飯塚氏が編み出した「別段賞与」なる手法は違法性がない行為であるにも関わらず、脱税指南をしたとして国税局から刑事告発されてしまいます。この理不尽な国税局の横暴に対して納得がいかない飯塚氏は、国税局に戦いを挑んでいきます。
国家権力の圧力にも屈せず、自らの信念と正義を貫く飯塚氏の姿がとてつもなくかっこいいです。官僚の横暴や傲慢によってどれだけ追い詰められても、極めて紳士的かつ冷静に物事を対処していく飯塚氏の姿が、とても爽快で読んでいて胸がすく思いです。
戦後の経済成長を牽引してきた官僚組織の闇の部分が、とても上手く描かれている作品です。光である飯塚氏と闇である官僚組織の対比が鮮明に描かれているため、両者のぶつかり合いは迫力があり圧倒されます。
ノンフィクションだけあって、色々と考えさせられる一冊です。特に、ビジネスマンにとっては自分の働き方と向き合ういい機会を与えてくれます。ぜひ読んでみて下さい。
燃ゆるとき
- 東洋水産の成長の過程を描くノンフィクション小説
- 困難に立ち向かっていく社長がカッコイイ
- 自分の正義を貫く勇気をくれる
「赤いきつねと緑のたぬき」で有名な東洋水産がわずか4人で創業し、東証一部上場、海外進出と大企業へと成長していく過程での苦難を描いたノンフィクション小説。
東洋水産の創業者・森和夫氏を主人公とし、会社の創業から現在に至るまでを辿る形で物語は進みます。米国進出に際する商社の横暴やライバル企業との抗争といった様々なドラマが、企業名や個人名を実名で登場させ展開されるため、とても興味深いです。
そして、森社長を筆頭に、苦難に立ち向かっていく展開がとても面白いです。ハラハラドキドキの連続で気が抜けません。丁寧な心理描写により、森社長と同じ目線から、物語を読み進めることが出来ます。
森社長の人柄がとにかく素晴らしいのがポイントです。「社員を大切にする」という経営理念のもと、従業員のため、会社のため、社会のために奉仕する姿勢に大変感銘を受け、胸が熱くなります。企業のリーダーのあるべき姿を見ることが出来ます。
魅力あふれる人物だからこそ、多くの人から慕われ、苦難を乗り越えることが出来るのだとしみじみ実感する一冊です。自分の正義を貫く勇気をくれる素敵な作品です。
辞令
- 組織の腐敗に立ち向かう姿を描く
- ドロドロとした社内抗争が面白い
- 古さを感じない
組織の腐敗に立ち向かう姿を描いたサラリーマン小説。
大手メーカーの宣伝部副部長・広岡修平に、突然、左遷辞令が下ります。異動先は「人事部付」。有能で人柄も良く、大きなミスもせずに社内の出世レースのトップを走っていた広岡に、左遷される節は思い当たりません。
理不尽な人事にいらだつ広岡は自ら調査に乗り出します。そして、辞令の裏に潜む、様々な人の思惑、ファミリー企業ならではの腐敗っぷりが明らかになっていきます。
広岡を罠に陥れた人物が誰なのかを探っていく展開、そして、そこから広岡が巻き返していく展開が面白いです。テンポよく話が進んでいくため、どんどん話に引き込まれます。
理不尽な人事に不満を抱えつつも、与えられた境遇で最高の結果を出そうとする広岡の姿に胸を打たれ、広岡に感情移入しながら、読み進めてしまいます。
また、社内抗争が激しく、誰かを妬んだり裏切ったりするドロドロとした人間模様が生々しく描かれていて面白いです。1988年刊行と、かなり古い作品ではありますが、古びた印象がないのは、そういった人間臭さはどの時代も不変だからだと感じます。
最強の経営者 アサヒビールを再生させた男
- アサヒビールの逆転劇を描いたビジネス小説
- 大体な改革を次々と実践する社長がカッコイイ
- 仕事への取り組み方が変わる
アサヒビールの逆転劇を描いたビジネス小説です。
1980年代後半、アサヒビールは業績の低迷により、「夕日ビール」と揶揄され蔑まれていました。
そんなアサヒビールに、住友銀行の頭取の席を最後まで競っていた副頭取・樋口廣太郎氏が社長として転身し、大体な改革を次々と実践してきます。それは、のちに業界最大手となるアサヒビールの大きな礎となっていたのでした。
とにかく樋口氏がかっこいいです。先例にとらわれない視野の広さを持ち、トップダウン型の強いリーダーシップで周囲を動かし、会社を引っ張っていく姿が生き生きと描かれています。
会社を良くしたいという樋口氏の熱い思いが文面からひしひしと伝わってきて、心を揺さぶられます。
また、作品全体の構成力の高さを感じる一冊です。無駄を感じず、テンポよく話が展開していくため、常にワクワクした気持ちで楽しく読み進めることが出来ます。
仕事に閉塞感を感じているビジネスマンには、特におススメです。樋口氏の姿を通じて、仕事への取り組み方が変わるはずです。
金融腐蝕列島
- バブル崩壊後の都市銀行の内情をリアルに描いた傑作
- 当時の時事問題を反映したテーマが設定されており興味深い
- 頭が冴えて魅力的な主人公が良い
バブル崩壊後の都市銀行の内情をリアルに描いた傑作シリーズの1作目。
舞台は大手都市銀行・協立銀行。ある日、同行勤務の竹中は総務部主任の辞令を受けます。与えられた役割は『総会屋対策』。
やがて、竹中はワンマン会長のスキャンダル隠しに翻弄され、不正融資に手を貸してしまいます . . . 。
1997年初版の本作。総会屋対策・不正融資・暴力団との関わり・官僚との癒着など当時の金融機関を巡る暗部が生々しく描かれています。
フィクションではありますが、当時の時事問題を反映したテーマが設定されているためとても興味深いです。
また、上下巻から成る作品で分量が多いですが、テーマが小気味よく移り変わっていくため飽きずに楽しく読むことが出来ます。
主人公の竹中がとても頭の冴える魅力的な人物として描かれているのがポイント。様々な圧力に翻弄されながらも、職務に奮闘する姿がとても格好良く爽快です。
生命燃ゆ
- 石油化学コンビナートの建設に奔走したエンジニアを描いた感動小説
- 主人公を支える妻や同僚らの献身的な姿が素敵
- 心の底から意欲が湧き上がってくる
高度成長期に、石油化学コンビナートの建設に奔走したエンジニアの姿を描いた感動小説。昭和電工に実在した人物をモデルにした物語で、テレビドラマ化もされた傑作です。
大分県に石油化学コンビナート建設を進める昭栄化学工業。そこのコンピュータエンジニアである柿崎は、コンピュータによる完全制御を実現すべくわが身を顧みず日夜仕事に没頭していました。
しかし、その矢先、病魔が彼を襲います。下された診断は白血病。確実に病魔が体を蝕んでいく中、柿崎は生命燃え尽きるまで仕事に命を捧げるのでした。
柿崎が命を捧げてまで仕事に取り組む姿が美しく描かれた本作。柿崎が働く姿はもちろん、彼を支える妻や同僚らの献身的な姿に思わず涙があふれてきます。
働くことの意義や仕事のやりがいを見失っている人に特にオススメの一冊。柿崎の生涯に触れることで、心の底から意欲が湧き上がってきます。
炎の経営者
- 伝説の経営者・八谷泰造の人生を描いた作品
- 会社が発展していく様が爽快に描かれていて面白い
- 八谷氏の生き方から刺激を受けること間違いなし
大手化学メーカー「日本触媒」を一代で世界的な企業へとのし上げた伝説の経営者・八谷泰造の人生を描いた作品。テレビドラマ化もされた大変人気のある作品です。
面識のない財界の大物・永野重雄にアポイントなしで会いに行き出資を直談判したり、優秀な人材であれば是が非でもスカウトしたり、圧倒的な熱量でビジネスに真摯に向き合った八谷泰造。
多くの人から慕われた八谷は、世の中の役に立ちたいという強い思いのもと自己を犠牲にし、自社技術を磨くことに全霊を注いだことで会社を世界的な規模へと発展させていったのでした。
大阪の小さな町工場を世界的な化学メーカーへと発展させた八谷泰造の凄みに圧倒される一冊。
豪胆さや行動力、卓越した洞察力、人材と技術を大切にする姿勢。
彼の人間力を構成する多くの要素に魅せられて、たくさんの人が彼を慕い集まってきて、そして会社が発展していく様が爽快に描かれていてとても面白いです。
著者が記者時代に八谷氏と個人的な交流があったからこそ書けた濃密な一冊です。八谷氏の生き方から刺激を受けること間違いなしです。
虚構の城
- 苦悩するサラリーマンを描いた高杉良のデビュー作
- 会社で生きていく難しさを痛感する作品
- 波瀾万丈な主人公の人生がテンポよく描かれている
組織の悪弊に苦悩するサラリーマンを描いた高杉良のデビュー作。
大手石油会社に勤めるエンジニア田崎健治は、画期的な公害防止技術の開発に成功し、エリートの道を突き進んでいました。
しかしその矢先、労働組合結成の相談を受けたことが発覚して左遷を命じられてしまいます。異動先では、不遇に扱われ、陰湿な嫌がらせを受ける始末。苦悩する田崎は、やがて自らの信念を貫くことを固く誓うのでした。
会社で生きていく難しさを痛感する作品。出世欲や承認欲求といった様々な欲望渦巻く会社組織が生々しく描かれています。
田崎の栄光と挫折が対比的に描かれているのがポイント。波瀾万丈な田崎の人生がテンポよく描かれているため、飽きずに一気に読めてしまいます。
おすすめ小説8選 作品一覧
高杉良の新刊 / 新作最新情報をチェックしてみよう
破天荒
発売日:2021/4/21 電子書籍:〇 文庫本:×
- 御年80歳を超えた著者の自伝的小説
- 新聞社で主人公が躍動する姿が生き生きと描かれている
- 著名な官僚や経済人が実名で登場するのがポイント
御年80歳を超えた著者が『最後の小説になるかもしれない』との言葉のもと書き上げた自伝的小説。
昭和33年、高校を中退した19歳の杉田亮平は、狭き門である石油化学新聞社に入社します。持ち前の器量と度胸を武器に、官僚や経営者と互角に渡り合い、スクープを連発する亮平。
その後、サラリーマン人生とは区切りをつけ、経済小説家へと転身を果たします。
高度経済成長期の日本の高揚感をひしひしと感じる作品。新聞社で亮平が躍動する姿が生き生きと描かれていてとても爽快です。
著名な官僚や経済人が実名で登場するのがポイント。著者の実体験をベースにした物語のため内容が非常に濃厚で読み応え十分の一冊です。
高杉良の作品を読んでみよう
高杉良のおすすめ小説をランキング形式で紹介いたしました。いかがでしたでしょうか。
今回は代表作から最新作まで厳選して紹介しましたが、他にも多くの人気作品があります。
電子書籍や文庫本化されている作品も多いので、気軽に面白いと思った一冊を手に取り、読んでみてはいかがでしょうか。お気に入りの作品がきっと見つかるはずですよ。
この記事を書いた人
東京都文京区在住のけんぞうです。
本が大好きで、自分が読んで面白かった本などを中心にWEB編集者として様々な情報を発信しています。
ぜひ、本の出品をお待ちしております。