特集朝井リョウのおすすめ小説8選 直木受賞作からエッセイまで幅広く紹介します
直木賞史上初の平成生まれの受賞者である小説家・朝井リョウ。
鋭い切り口から描かれる作品は多くの読者を魅了し、映像化されている作品も数多くあります。
そこで今回は、朝井リョウの作品をまだ読んだことがない初心者の方向けに、独自におすすめの小説を厳選しランキング形式でまとめてみました。
どれも人気の作品でとても面白いので、ぜひ読んでみて下さい。
『朝井リョウ』 とは
経歴や受賞歴
朝井リョウは、1989年岐阜県出身の小説家です。早稲田大学在学中の2009年に『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞し、小説家としてデビューします。
2012年、『もういちど生まれる』で第147回直木賞候補となり、2013年『何者』で第148回直木賞を受賞します。
直木賞史上初の平成生まれの受賞者であり、男性受賞者としては最年少の受賞者となっています。
作品の特徴や魅力
朝井リョウ作品は物事の真理をつく鋭い切り口が特徴です。
現代社会が持つ違和感や矛盾点を見事に浮き彫りにしているため、読者から多くの共感を呼んでいます。
また、心理描写が繊細で登場人物が生き生きと描かれいるのも魅力の一つです。
おすすめ小説 8選
何者
- 直木賞を受賞した代表作
- 就活に挑む若者達のリアルな心境が描かれている
- SNSに翻弄される若者を描く現代社会を風刺する作品
直木賞を受賞した朝井リョウを代表する1冊。映画や舞台化もされた人気の作品です。
協力して就活対策をするために集まるようになった5人の大学生。しかし、SNSや面接で吐露される彼らの本音や自意識がお互いの関係性を少しずつ変えていきます。
SNSに翻弄される若者を描いた現代社会を風刺する作品です。就活に挑む若者達の焦りや自分は他人とは違うという心境がリアルに描かれていて物語に引き込まれていきます。
5人の就活活動がどういった結末を迎えるのかがポイント。予想だにしないラストが必見の一冊です。
桐島、部活やめるってよ
- 日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞したデビュー作
- 多感な高校生の心理描写がとても繊細に描かれている
- 高校生の複雑な人間関係やスクールカーストがリアルに描かれている
朝井リョウのデビュー作に当たる青春小説。2012年に映画化され日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞しました。
バレーボール部のキャプテンで人気者の桐島が部活を辞めた波紋が、部活も校内の立ち位置も全く異なる5人の同級生に広がっていく様を描いた作品です。
物語は5人の同級生を主体とした群像劇で進んでいきます。桐島の退部が彼らの心情に与える影響がとても繊細に描かれていて物語に引き込まれていきます。
高校生の複雑な人間関係やスクールカーストがリアルに描かれているのがポイント。多感な高校生の葛藤が青春を感じさせるオススメの一冊です。
武道館
- 女性アイドルグループをテーマにした長編小説
- 近年のアイドルを取り巻くリアルな実態が描かれている
- 少女の悩みや葛藤が繊細に描かれている
女性アイドルグループをテーマにした長編小説。2016年にテレビドラマ化もされています。
武道館ライブを目標に活動を続ける女性アイドルグループ『NEXT YOU』。独自のスタイルで行う握手会や売上ランキングに入るための販売戦略、一曲につき二つのパターンがある振付など、様々な手段で人気と知名度を上げ一歩ずつ目標に近づいていきます。
しかし、注目が集まるにしたがって様々な種類の視線が向けられるようになり、彼女たちは戸惑いを感じ始めます。
物語はNEXT YOUのメンバーである高校生の愛子の視点から進みます。アイドルとしての自分と本当の自分との狭間で悩み、葛藤する少女の心情が繊細に描かれていて引き込まれていきます。
恋愛禁止やSNSの特定、ネットの炎上など近年のアイドルを取り巻くリアルな実態が描かれているのがポイント。アイドルという道を選択した少女が最後に辿り着いた先に待つものとは、最後まで必見の一冊です。
ままならないから私とあなた
- 「レンタル世界」「ままならないから私とあなた」の2編が収められた一冊
- 価値観のズレが引き起こす人間模様を描いた作品
- 読みやすい文章で伏線を綺麗に回収しながら物語は進む
「レンタル世界」「ままならないから私とあなた」の2編が収められた一冊。
先輩の結婚式で見かけた新婦友人の女性と偶然再会した雄太。しかし、彼女は全く違った名前を名乗っていました。不思議に思った雄太の問い詰めに彼女は、結婚式には「レンタル友達」として出席していたことを明かします。「レンタル世界」
無駄はどんどん切り捨てていく合理主義の薫と無駄にこそ価値があると信じる雪子。幼馴染で仲良しだった二人の価値観は徐々に離れていき、ついに決定的に対立する瞬間が訪れます。「ままならないから私とあなた」
どちらも価値観のズレが引き起こす人間模様を描いた作品です。些細なズレが徐々に大きな問題へと発展していく過程がとても面白いです。
また、読みやすい文章で伏線を綺麗に回収しながら物語は進むため、ストレスなく一気に読めてしまいます。自分の価値観はどの登場人物に近いか考えながら読むのがおすすめです。
世界地図の下書き
- 児童養護施設で暮らす子供たちを巡る物語
- 未来を見据え成長していく子供たちの姿が感動的
- 希望に満ちた作品で温かい読後感がある
坪田譲治文学賞を受賞した作品。児童養護施設で暮らす子供たちを巡る物語です。
事故で両親を亡くし、施設で暮らすようになった小学3年生の大輔。慣れない環境に当初は戸惑いますが、そこで出会った仲間たちの支えもあり徐々に心を開いていきます。
やがて、高校生の佐緒里が卒業を機に施設を出ていくことになります。そこで、佐緒里の門出を祝して大輔は仲間たちと「蛍祭り」を復活させる計画を立てますが・・・。
主人公の大輔と4人の仲間たちを中心に物語は進んでいきます。学校でのいじめや親族からの虐待などそれぞれが辛い事情を抱えながらも、未来を見据え成長していく子供たちの姿がとても感動的です。
子供たちの心情を思うと時折読んでいて辛くなりますが、希望に満ちた作品であり、とても温かい読後感があります。
チア男子!!
- 男子チアリーディングを題材にした青春物語
- 登場人物の個性が際立っていて面白い
- メンバーが支え合い成長していく姿が美しい
朝井リョウの2作目に当たる作品。男子チアリーディングを題材にした青春物語です。
幼いころから柔道を続けてきた大学1年生の晴希。しかし、怪我をきっかけに柔道を辞めることを決断します。
そんな折、親友の一馬に誘われ男子チアチームの結成を目指すことになります。
様々な事情を抱えた16人がチアに情熱を注ぐエネルギーに溢れた作品です。登場人物は多いものの一人一人のキャラ設定が作り込まれているため、それぞれの個性が際立っていてとても面白いです。
また、メンバーが様々な感情に左右され、時にぶつかり合いながらも支え合い成長していく姿がとても美しいです。感動がこみ上げてくるオススメの一冊です。
スペードの3
- 女性3人の視点で描かれる連作短編集
- 女性の嫉妬心や劣等感が生々しく描かれた作品
- 読者を欺く様々なトリックが仕掛けられている
女性3人の視点で描かれる連作短編集です。全3編からなり各章ごとに視点が移っていきます。
有名劇団のスターつかさのファンクラブを束ねる美知代。小学校の同級生むつ美の出現によって美知代の立場は危うくなっていきます。美知代を脅かすむつ美には、ある目的がありました。
そして、かつての人気は影を潜め最近ではオファーが減る一方のつかさ。それぞれに不満を抱えた3人の人生が交差し、動き出します。
女性の嫉妬心や劣等感が生々しく描かれた作品。それらの感情をどう昇華するのかが三者三様でとても面白いです。
読者を欺く様々なトリックが仕掛けられているのがポイント。読みやすい文章でスラスラと読めるのでおススメです。
おすすめ小説8選 作品一覧
朝井リョウの新刊 / 新作最新情報をチェックしてみよう
正欲
発売日:2021/3/26 電子書籍:〇 文庫本:〇
- 柴田錬三郎賞を受賞し本屋大賞にノミネートされた作品
- 『多様性』という言葉が持つ違和感や矛盾点に切り込んでいる
- 心理描写が繊細に描かれていて面白い
柴田錬三郎賞を受賞し、2022年本屋大賞にノミネートされた長編小説。2023年には映画化もされています。
息子が不登校になった検事の寺井啓喜、中学時代の秘密を抱えるショッピングモール店員の桐生夏月、初めての恋に気づいた大学生の神戸八重子。全く関わりがなかった3人の人生は、ある人物の事故死をきっかけに思わぬ形で交差していきます。
近年声高に叫ばれる『多様性』という言葉が持つ違和感や矛盾点を鋭い視点から切り込んだ作品です。社会が許容している『多様性』から溢れたマイノリティの葛藤や苦しみをリアルに描いています。
また、様々な立場に置かれた登場人物の心理描写が繊細に描かれているのがとても面白いです。読む前は考えもしなかった着眼点を与えてくれるオススメの一冊です。
スター
発売日:2020/10/7 電子書籍:〇 文庫本:〇
- 対照的な道を選択した2人の若者の物語
- 自らが選択した道を信じ突き進んでいく2人の姿が感動的
- エネルギーに満ちた作品で活力が湧いてくる
「表現者」として対照的な道を選択した2人の若者の物語。
学生時代に共同で映画を製作し賞を獲得した立原尚吾と大土井紘。大学卒業後、 尚吾は有名な映画監督のもとに弟子入りする一方、紘はYouTubeでの動画配信という道を選びます。
作品の質や価値は何をもって測られるのでしょうか。対照的な道に進んだ2人が辿り着いた先で見た光景とは。
物語は主人公の2人が交互に描かれながら進んでいきます。2人の信念や矜持には双方とも説得力があるためとても読み応えがあります。
また、悩みや葛藤がありながらも、自らが選択した道を信じ突き進んでいく2人の姿がとても感動的です。エネルギーに満ちた作品で、活力が湧いてくるオススメの一冊です。
朝井リョウの作品を読んでみよう
朝井リョウのおすすめ小説をランキング形式で紹介いたしました。いかがでしたでしょうか。
今回は代表作から最新作まで幅広く紹介しましたが、他にも多くの人気作品があります。
電子書籍化や文庫本化されている作品も多いので、気軽に面白いと思った一冊を手に取り、読んでみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人
東京都文京区在住のけんぞうです。
本が大好きで、自分が読んで面白かった本などを中心にWEB編集者として様々な情報を発信しています。
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