特集湊かなえのおすすめ小説10選 イヤミスの女王の代表作と最新作を幅広く紹介します
衝撃のデビュー作「告白」や「Nのために」などドラマや映画化された作品が多く、数多くの人気作を世に送り出してきた作家・湊かなえ。
ミステリー作品を中心に執筆しており、イヤミスの女王と呼ばれていることでも有名です。
そこで今回は、湊かなえの作品をまだ読んだことがない初心者の方向けに、独自におすすめの小説を厳選しランキング形式で紹介します。
どれも人気の作品ばかりなので、ぜひ読んでみて下さい。
『湊かなえ』 とは
経歴や受賞歴
湊かなえは1973年広島県出身の小説家です。大学を卒業後、高校の非常勤講師などの勤務経験を経て、2008年に『告白』で小説家としてデビューしました。
同作は、2009年に本屋大賞を受賞し、書籍の発行部数が300万部を超える大ヒットを記録しています。
その後も、2012年に『望郷、海の星』で日本推理作家協会賞、2016年に『ユートピア』で山本周五郎賞を受賞するなど多くの賞で高い評価を受けている日本を代表するミステリー作家の一人です。
作品の特徴や魅力
湊かなえ作品といえば、イヤミスと呼ばれる、後味の悪いミステリー作品が多いのが特徴です。
話の展開が見えてきたと思いきや、驚きの展開を見せ始めることも多く、最後の一文まで気が抜けません。
また、ストーリー展開が抜群に上手いです。意外な展開にも決して矛盾点や違和感がなく、前後のつじつまがあっているため、満足度の高い作品ばかりです。
おすすめ小説 10選
母性
- 母娘の歪んだ関係性を描いたミステリー
- 二人の視点のズレが面白い
- 徐々に全貌が見えてくる展開に引き込まれる
母娘の歪んだ関係性を描いたミステリー。これを原作として、映画化もされたベストセラー小説です。
ある日、女子高生が自宅の中庭で倒れているのを母親が発見する所から物語は始まります。事故か自殺か真相が分からない中、母娘それぞれの視点から見た物事がつづられ、次第に事件の全貌が浮かび上がってきます。
同じ出来事なのに、二人の視点からは全く異なる捉え方をしているのが面白いです。誰の証言が真実で、誰の証言が間違っているのかを考えながら読み進める楽しさがあります。
また、互いを思いやる気持ちを持ちながらも、すれ違ってしまう母娘の姿がとても切ないし、やるせないです。二人の心理描写が丁寧に描かれているため、どちらにも共感できます。
本作は、ストーリー展開が綺麗でテンポ感も程よいため、とても読みやすい一冊です。事実を小出しにしながら、徐々に事件の真相が明らかになっていく展開は、常に好奇心をそそられ、ページをめくる手が止まりません。
告白
- 本屋大賞を受賞したデビュー作
- 徐々に事件の全貌が見えてくる展開が面白い
- 衝撃のラストに最後まで気が抜けない
湊かなえのデビュー作にして、本屋大賞を受賞したベストセラー小説。2010年に松たか子主演で映画化され大ヒットしたことでも大きな話題を呼びました。
我が子を校内で生徒に殺された女性教師の復讐を描いた物語です。全6章の構成となっており、各章で「級友」「犯人」「犯人の家族」と語り手が入れ替わり、それぞれの視点から見た事件が描かれています。
それぞれの人物が語る事件には、主観に支配された思い込みや、保身の嘘が含まれているため、複数人の証言を繋ぎ合わせることで初めて全体像が見えてきます。構成が見事で、一本道で話が進むのではなく、二転三転しながら真相が明らかになっていく過程がとても面白いです。
また、あちこちに散りばめられた伏線や疑問が、意外な形で回収される驚きもあり、読んでいて飽きがきません。
そして、復讐の果てに何があるのか。衝撃のラストに最後まで気が抜けません。湊かなえを存分に堪能できる一冊です。
少女
- 人が死ぬ瞬間を見たい高校生の物語
- 2つの物語の繋がりが徐々に見える過程が面白い
- 高校生の成長を描く爽やかさがある
デビュー作『告白』に次ぐ2作目の作品で、映画化もされたベストセラーミステリーです。
親友の自殺を目撃したことがあるという転校生の話をきっかけに、人が死ぬ瞬間を見たいという衝動に駆られた高校生の由紀と敦子。そこで、2人は互いには知らせず夏休みを利用して、人が死ぬ瞬間を見るべく、それぞれ老人ホームと小児科病棟へボランティアに行きます。
物語は、由紀と敦子の視点が交互に入れ替わり、それぞれの行き先での出来事が描かれます。共通点が見えない2つの話ですが、次第に登場人物の関連性や、話のつながりが見えてくるのが面白いです。散りばめられた伏線も、予想を裏切られる意外な形で回収されるため、先が気になって読む手が止まらないです。
また、本作は多感な高校生2人の友情と成長が描かれており、熱い青春物語の一面も有しています。そのため、死という重いテーマを扱っていながら、爽やかな印象を受けます。心理描写も、心の光と闇がとても繊細に描かれているため、思わず感情移入してしまいます。
話が複雑で登場人物も多いですが、分かりやすい文章で、状況がスッと頭に入ってくるオススメの一冊です。ぜひ読んでみて下さい。
Nのために
- 湊かなえ初の純愛ミステリー小説
- 4人の証言から事件の全貌が見えてくる
- 純愛が事件を歪なものにする
湊かなえ初の純愛ミステリー小説。2014年にテレビドラマ化された人気の作品です。
超高層マンションの一室で、住人の野口夫妻の変死体が発見されます。現場に居合わせたのは、20代の男女4人。それぞれの証言は驚くべき真実を明らかにしていきます。一体なぜ夫婦は死んだのでしょうか。
物語は、4人の視点が移り変わっていき、それぞれの人物から見た事件の証言がつづられます。証言の時系列が過去と現在を行き来する複雑さはありますが、話の構成とストーリーの運び方が上手いため、状況整理がしやすく、とても読みやすいです。
バラバラに思えたそれぞれの証言が、パズルのピースのごとく繋がり一つの線になっていく過程がとてもワクワクします。伏線の回収も見事で、読んでいてとても楽しいです。
本作は、登場人物が抱く純愛が事件を歪なものにしているのがポイント。繊細に描かれた純愛が切なく、共感出来るからこそ、心を揺さぶられます。果たして、それぞれが抱く純愛は誰に対して向けられたものなのでしょうか。
様々な愛の形があることを深く感じる一冊です。ぜひ読んでみて下さい。
贖罪
- 一つの殺人事件を起点に、関係者の贖罪を題材としたミステリー
- 悲劇が連鎖していく展開が恐ろしい
- 5人の主観が積み重なって犯人が見えてくる展開が見事
一つの少女殺人事件を起点に、事件に関わった5人の贖罪を題材としたミステリー小説。
空気の綺麗な田舎町で起きた小学生の少女の殺人事件。直前まで一緒に遊んでいた4人の同級生の少女は、犯人を見ていたが、恐怖心からかその顔を思い出せずにいました。
事件後、殺された少女の母親は4人に対して、「あなたたちを絶対に許さない。必ず犯人を見つけなさい。それができないのなら、わたしが納得できる償いをしなさい。」と言い放ちます。
そこから、事件は未解決のまま、15年の月日が流れます。4人はいまだに母親から浴びせられた呪いの言葉で罪の意識に苦しめられていました。そして、4人は行動を起こし、悲劇が連鎖していきます。
物語は、各章で、4人の同級生と殺された少女の母親の計5人の視点が入れ替わっていき、それぞれの独白で進んでいきます。
4人が贖罪のために起こした行動が連鎖し、更なる悲劇を生む展開がとても恐ろしいです。心理描写も緻密で話に引き込まれます。
5人の主観が積み重なって、徐々に犯人が明らかになっていく展開がポイント。事件の真相や結末はかなりのインパクトがあり、読み応え十分の一冊です。
リバース
- 人間模様が見所のミステリー
- 予想が何度も覆される驚きの展開
- 衝撃の結末が待っている
2017年にテレビドラマ化された大人気ミステリー小説。
平凡な毎日を送るサラリーマンの深瀬和久は、唯一の趣味であるコーヒーを通じて、美穂子と知り合い、やがて二人は交際関係に発展します。
日常が華やぎ始めた深瀬でしたが、ある日、美穂子のもとに「深瀬和久は人殺しだ」という告発文が届きます。
美穂子に問い詰められた深瀬は、隠し通してきた過去のある出来事を話しますが、それを聞いた美穂子は深瀬のもとを去ってしまいます。
一方、深瀬の大学時代の仲間のもとにも、同様の告発文が届いていることが判明します。そこで、深瀬は告発文の送り主を突き止めるため、行動を起こします。
物語は、深瀬と大学時代の仲間との人間模様を描きながら進んでいきます。犯人を予想しながら、読み進める楽しさがあります。
しかし、予想は何度も覆され、最後には衝撃の結末が待っています。タイトル「リバース」に込められた意味を、存分に堪能してみてください。
未来
- 思い描く明るい未来と辛い現実を対比的に描いたミステリー
- 一気に回収される伏線が凄い
- 苦しむ子供に何が出来るのか考えさせられる
子供たちが思い描く明るい未来と辛い現実を対比的に描いたミステリー小説。
父を亡くしたばかりの10歳の少女・章子のもとに、ある日、20年後の未来の自分からの手紙が届きます。その手紙に励まされた章子は、送り主が気になりりつつも、返事を書きます。
前半は、章子が手紙に日常で起きたことをつづる形で進んでいきます。同級生からのいじめ、家庭問題、暴力など章子の日常があまりに不幸の連続で、読んでいてとても辛いです。
視点が変わる後半も、連鎖していく登場人物の辛い日常が綴られ、切なく苦しい気持ちになります。手を差し伸べる大人が誰ひとりいないことへのもどかしさを感じます。
終始、重い内容ですが、視点が変わって一気に回収される伏線やテンポよく場面が移り変わっていくストーリー、多彩な心理描写などがとても魅力的で話に引き込まれます。
苦しんでいる子供たちに大人が出来ることは何なのか、色々と考えさせられる一冊です。
カケラ
- 美容整形をテーマとした傑作ミステリー
- 点と点が繋がっていく面白さ
- 事件の真相が悲しく涙があふれてくる
美容整形をテーマに、幸せとは何かを問う傑作ミステリー。
美容整形医師の橘久乃は、久しぶりに合った幼馴染から、小学校の同級生の横網八重子の娘・有羽がドーナツに囲まれて自殺したことを聞きます。彼女は何故自殺をしたのでしょうか。久乃が様々な関係者の証言を得て、その真相に迫っていきます。
様々な人の証言が点として集まっていき、次第に一つの線となり、事件の輪郭が見えてくる展開がとても面白いです。文章も読みやすく、テンポ感も良いため、スラスラと読めてしまいます。
事件の真相はとても悲しく涙があふれてきます。彼女を追いこんだ悪気のない悪意にやるせない気持ちになる一冊です。
落日
- 一家殺害事件の真実に迫るミステリー
- 徐々に登場人物の意外な繋がりが見えてくる
- スッキリとした爽快感が残る
2人の女性主人公が、過去の一家殺害事件の真実に迫るミステリー小説。直木賞候補作にもなった傑作です。
業界内で名の知れた映画監督・香から新人脚本家・千尋のもとに脚本の依頼がきます。題材は、引きこもりの長男が妹を刺殺し、放火をして両親まで殺害した「笹塚町一家殺害事件」。
映画撮影のため、事件の調査を始めた二人でしたが、やがて、これまで明かされることのなかった衝撃の真実にたどり着きます。
調査の過程で、登場人物の意外な繋がりが次から次へと見えてくる展開が面白い。後半の伏線回収も見事で、読み始めたら止まらない一冊です。
また、事件の真実を知った二人の前を向く姿がとても美しく、感動的です。悲しいお話ではありますが、希望が見えるラストを迎えるため、スッキリとした爽快感が残ります。
ユートピア
- 歪んだ人間関係を描いた心理サスペンス
- 人間のいやらしさが存分に描かれている
- 徐々に加速していくスリリングな展開は圧巻
鼻崎町という田舎町を舞台に、3人の女性の歪んだ人間関係を描いた心理サスペンス小説。山本周五郎賞を受賞した傑作です。
鼻崎町で生まれ育ち仏具店に嫁いだ菜々子、夫の転勤がきっかけで鼻崎町へ引っ越してきた光稀、鼻崎町の美しい景観に魅せられて移住してきた陶芸家のすみれ。
町の祭りで知り合った3人は、事故で車椅子で生活する菜々子の娘・久美香がきっかけで、車椅子支援の基金「クララの翼」を立ち上げます。
しかし、取り繕っていた3人の関係性は徐々に崩れ始めていき、やがて不穏な事件が発生したのでした。
本作は、表面上は仲良くしていても、本心は嫉妬や、猜疑心、優越感などで満ち溢れている人間のいやらしさがこれでもかと描かれた作品です。3人の女性の視点が入れ替わっていくので、それぞれの腹のうちがはっきりと描かれている面白さがあります。
そして、徐々に加速していくスリリングな展開は圧巻です。小気味よく進んでいくストーリーは見事で、一気に読んでしまいます。
おすすめ小説10選 作品一覧
湊かなえの新刊 / 新作最新情報をチェックしてみよう
湊かなえのことば結び
発売日:2022/9/30 電子書籍:× 文庫本:×
残照の頂 続・山女日記
発売日:2021/11/11 電子書籍:〇 文庫本:×
- 特別な思いを胸に山に登る女性を描いた4編の短編集
- 山の頂上に達した主人公の姿に大きな感動がある
- 表現力豊かに彩られた山の情景描写がポイント
特別な思いを胸に山に登る女性を描いた4編の短編集。大ヒット作『山女日記』の続編に当たる作品で、テレビドラマ化もされています。
山岳ガイドを目指す娘とその夢を素直に応援できない母親の登山や、亡き夫に対して後悔の念を抱く女性の登山などが描かれています。
主人公が経験してきた辛い日々と険しい山道が重なるように描かれた本作。一歩一歩登っていく山道は過去との決別を意味しているからこそ、山の頂上に達した主人公の姿には大きな感動があります。
表現力豊かに彩られた山の情景描写がポイント。まるで主人公とともに山を登ったかのような感覚を味わえる満足度の高い一冊です。
ドキュメント
発売日:2021/3/25 電子書籍:× 文庫本:×
- 高校の部活を舞台にした青春物語
- 高校生が部活に一生懸命に取り組む姿が爽やか
- 途中からミステリー要素が加わるのが面白い
高校の部活を舞台にした青春物語。『ブロードキャスト』の続編に当たる作品です。
交通事故による怪我の影響で陸上競技を断念した町田圭祐は、高校では放送部に入ります。放送コンテストのテレビドキュメント部門にノミネートすることを決めた圭祐たち。
題材としてドローンを活用して陸上部の撮影を始めますが、やがて、駅伝の全国大会のメンバー入りを狙う圭祐の親友・良太がタバコを持っている姿が映し出されるのでした。
放送部の部員たちが大会に向け、悩みながら一生懸命に取り組む姿が爽やかに描かれた作品です。
途中から、良太を罠に嵌めた犯人を探るミステリー要素が加わるのがポイント。思わぬ箇所に張られていた伏線が回収され、真相が明らかになる展開はとても面白いです。
湊かなえの作品を読んでみよう
湊かなえのおすすめ小説をランキング形式で紹介いたしました。いかがでしたでしょうか。
今回は代表作から最新作まで厳選して紹介しましたが、他にも多くの人気作品があります。
電子書籍や文庫本化されている作品も多いので、気軽に面白いと思った一冊を手に取り、読んでみてはいかがでしょうか。お気に入りの作品がきっと見つかるはずです。
この記事を書いた人
東京都文京区在住のけんぞうです。
本が大好きで、自分が読んで面白かった本などを中心にWEB編集者として様々な情報を発信しています。
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