特集荻原浩のおすすめ小説8選 直木賞作品から映像化された傑作まで幅広く紹介
シリアスからコメディまで、幅広い作風で数多くの人気作を生み出してきた直木賞作家・荻原浩。
数多くの賞を受賞し、ドラマ化や映画化された作品が多いことでも有名です。
そこで今回は、荻原浩の作品をまだ読んだことがない初心者の方向けに、独自におすすめの小説を厳選しランキング形式でまとめてみました。
どれも人気の作品ばかりなので、ぜひ読んでみて下さい。
『荻原浩』 とは
経歴や受賞歴
荻原浩は1956年埼玉県出身の小説家です。成城大学を卒業後、広告代理店での勤務を経て、フリーのコピーライターとして独立しました。
その後、1997年に『オロロ畑でつかまえて』で小説すばる新人賞を受賞し、小説家としてデビューしました。
2005年には『明日の記憶』で本屋大賞第2位となり、山本周五郎賞を受賞しています。また、同作は渡辺謙主演で映画化されたことでも大きな話題を呼びました。
その後も第一線での活躍を続け、2016年には『海の見える理髪店』で直木賞を受賞しています。
作品の特徴や魅力
ジャンルが幅広い荻原浩作品ですが、登場人物の心情の移り変わりがとても丁寧に描かれているのが魅力の一つです。
心の弱さを乗り越えた成長や、不安や迷いを乗り越え前を向く姿などが多彩な文章で綴られているため、心を揺さぶられる作品が多いです。
おすすめ小説 8選
海の見える理髪店
- 直木賞を受賞した連作短編集
- 悩みを乗り越え、前を向いて進んでいく心温まるストーリー
- 情景描写が鮮やかで、映像が浮かんでくる
2016年に直木賞を受賞した連作短編集。様々な家族のあり方を描いた、表題作を含む、全6話が収められています。NHKでテレビドラマ化もされた大ヒット作品です。
家族に関する喪失感や悩みを抱えた登場人物が、その現実と向き合い前向きに懸命に生きていこうとする心温まる作品です。
6話の中でも、特に表題作『海の見える理髪店』が印象的です。年老いた店主が海辺で営む小さな理髪店。そこは、有名俳優や政財界の大物も通いつめたと言われる伝説の理髪店でした。ある日、一人の男が予約を入れ、店を訪ねてきます。その男は胸にある想いを秘めていました . . . 。
物語は店を訪ねる男の視点で進み、店主とのやり取りを中心に進んでいきます。店主が語る波瀾万丈で切ない人生が涙を誘います。そして、意外な方向へと舵を切るストーリー。ラストには、大きな感動が待っています。
情景描写が鮮やかなで、海や理髪店のゆったりとした雰囲気に浸りながら心地よく読み進めることが出来る作品です。重い話もありますが、どの話も希望が見えるラストを迎えるため、読後には大きな満足感が残るはずです。
噂
- 意図的に広めた噂が現実になるサスペンス・ミステリー
- 男女の刑事コンビの人間模様が良い
- 伏線回収とストーリー展開が圧巻
「レインマンが現れて、女の足首を切り落とす。でも、ミリエルの香水をつけていれば襲われない。」広告会社が香水を売るための販売戦略として、意図的に広めた噂。口コミで瞬く間に広がった噂は、現実となり、足首のない少女の遺体が発見される。ーというあらすじのサスペンス・ミステリーです。
主人公である刑事・名島と、相棒の美人刑事・小暮が事件を追う形で物語は進んでいきます。男女二人のコンビがとても良いです。
ミステリーでありながら、登場人物の人間模様にもスポットが当てられているのがポイント。お互いに警戒しあっていた二人が、捜査を進める中で、信頼関係を醸成していく展開が熱いです。配偶者に先立たれて独身である似たような境遇の二人が恋愛関係に発展するかのドキドキが見所の一つです。
本筋であるサスペンス・ミステリーも非常に良質です。殺人鬼であるレインマンの狂気が凄まじく、女子高生を殺していく描写は恐怖で身震いします。
そして、巧みに伏線を回収しながら、二転三転しながら展開していくストーリーは圧巻。先が読めない展開で、後半にかけて徐々にスピード感が上がっていくため、最後まで気が抜けません。
明日の記憶
- 「若年性アルツハイマー」と向き合う姿を描いた感動作
- 確実に体を蝕んでいく病が恐ろしい
- 病と必死に戦う姿に涙があふれてくる
本屋大賞第2位にランクインし、山本周五郎賞を受賞したほか、渡辺謙主演で映画化もされた傑作。
「若年性アルツハイマー」と診断された広告代理店に勤める50歳営業部長・佐伯が病気と向き合う姿を描いた作品です。
佐伯の一人称で綴られる本作は、佐伯の立場から病気を追体験しているような感覚で進んでいきます。病気の進行で、記憶が失われていく佐伯の不安や苦悩が生々しく描かれており、確実に病気が進行していく様は、底知れぬ恐怖を感じます。
それでも、病気に負けず、これまで通りの生活を続けようと強い意志を持つ佐伯の姿が感動的です。周りに病気と悟られないように、必死に大量のメモを作って仕事に取り組む姿が涙ぐましいです。それでも、確実に記憶を蝕んでいく病に無念で涙があふれてきます。
しかし、暗さや悲壮感は感じない作品です。それはひとえに、荻原氏ならではの柔らかい文章と、家族愛が溢れている点によるところが大きいと思います。
アルツハイマーという現代においても完治する見込みがない恐ろしい病気を知るきっかけとなる一冊です。とても読み応えがある素晴らしい作品です。
神様からひと言
- お客様相談室を題材にしたサラリーマン小説
- ユーモアたっぷりのコメディタッチで面白い
- お客様相談室の同僚が生き生きとしていて面白い
お客様相談室を題材にしたサラリーマン小説。テレビドラマ化もされたベストセラー作品です。
大手広告代理店を辞め、食品メーカーに転職した佐倉凉平は入社早々の会議で、トラブルを起こしてしまったがために、社内でリストラ要因収容所と目される「お客様相談室」へと異動となってしまいます。クレーム処理に悪戦苦闘する凉平でしたが、クレーム処理の名人と謳われる篠崎の教えのもと、徐々に成長していきます。
凉平が様々なクレームに対応していく展開がとても面白いです。篠崎の助けを借りながら、次から次へと降ってくる難題をこなしていく様は爽快。ユーモアを随所に含みながら、コメディタッチで軽快に話が進んでいくため、読んでいてとても楽しいです。
また、お客様相談室の一癖も二癖もある同僚が生き生きと描かれているのがポイント。その中でも、篠崎は圧倒的な存在感を放っています。普段はさぼってばかりだが、こと謝罪に関してはプロフェッショナルである篠崎の、クレーマーとの駆け引きや交渉術の巧みさには「凄い!」の一言。実生活の会話術においても非常に参考になる含蓄のある話も多く、読み応え十分の一冊です。
コールドゲーム
- 「いじめ」を題材としたミステリー小説
- 復讐が徐々に迫ってくる緊張感が凄い
- 最後まで飽きない起伏に富んだストーリー
「いじめ」を題材としたミステリー小説です。
高校3年の夏、中学2年のクラスメイトが次から次へと何者かに襲われます。クラスメイトの一人・光也はクラスでイジメられていたトロ吉の復讐なのではないかと思い始め事件を追っていきます。
極めて計画的に実行されていく復讐がとても怖いです。大怪我を負わせられる者、殺されてしまう者、トロ吉という目に見えない存在が徐々に光也達に迫ってくる描写は緊張感が凄まじく、読んでいてドキドキします。
登場人物の心理描写が丁寧に描かれているのがポイント。いじめをした者、いじめられた者、いじめを傍観していた者、それぞれの心の揺れや葛藤、保身が生々しく描かれており、話に引き込まれます。
社会問題として今も昔も世にはびこる「いじめ」が題材とあって、色々と考えさせられる作品です。
スリルとミステリーが絶妙に交じり合ったストーリーは、起伏に富んでおり、全く飽きず、最後まで駆け抜けるようにして、読んでしまいます。
オロロ畑でつかまえて
- 荻原浩のデビュー作である痛快ユーモア劇
- 思わず笑ってしまう無茶苦茶なストーリー
- 登場人物のキャラが立っている
荻原浩のデビュー作にして、小説すばる新人賞を受賞した痛快ユーモア劇。思わず笑ってしまうユーモアセンスに溢れた作品です。
過疎化に陥った秘境の村が、村おこしのため、倒産寸前の広告代理店と組み、起死回生を賭けた大勝負に出る物語です。
「これといった目玉がないなら、捏造してしまえ!」と無茶苦茶な計画で、突き進んでいく展開がとにかく面白いです。
登場人物一人一人のキャラが立っていて、どこか憎めないため、応援しながら読み進めてしまいます。
本作は、シリーズ化されているため、面白いと思った方は、ぜひ続編も読んでみて下さい。
僕たちの戦争 新装版
- 戦時中と現代で入れ替わった二人の少年を描いた感動物語
- 現代と戦時中の異様さが浮き彫りになる
- 元の世界に戻ろうと奮闘する二人が迎える結末とは
戦時中と現代で入れ替わった二人の少年を描いた感動物語。テレビドラマ化もされた大変人気の高い作品です。
2001年、フリーターの健太は、サーフィンで大波に飲み込まれ気が付くと戦時中の1944年にタイムスリップしてしまいます。方や1944年、飛行訓練をしていた吾一は、雷雲に突っ込み墜落した結果、2001年にタイムスリップしてしまいます。
時代が入れ替わった二人でしたが、見た目が瓜二つのため周囲はその事実に気づかず、お互いの環境で受け入れられます。果たして、二人は元いた場所へ戻ることが出来るのでしょうか。
入れ替わった二人の状況が交互に描かれる形で物語は進んでいきます。時代の変化に戸惑う二人を通じて、現代そして戦時中の異様さが如実に浮き彫りになるのがとても興味深くて面白いです。
元の世界に戻ろうと奮闘する二人がどういった結末を迎えるのかがポイント。ページが進むにつれ徐々に緊迫感が増していく展開からは目が離せません。
おすすめ小説8選 作品一覧
荻原浩の新刊 / 新作最新情報をチェックしてみよう
ワンダーランド急行
発売日:2022/12/17 電子書籍:〇 文庫本:×
- 異世界に迷い込んだサラリーマンを描いた物語
- 独特な異世界の設定が面白い
- 先が気になって仕方がない
2022年12月に発売された3年ぶりの新刊。日経新聞で連載され、大きな話題を読んだ作品です。
いつもの通勤電車を待っていた40歳の野崎修作は、鬱屈した現実から逃げるように、衝動的に目的地とは逆方向の電車に乗り込みます。
終点の駅で降り、しばらく山の中をさまよい、日常からの解放感を味わう野崎。しかし、元居た駅に戻ってみると、何かがおかしいことに気づきます。
マスク姿の人を見かけないし、妻との会話も嚙み合わない . . . 。
異世界に迷い込んでしまったことを悟った野崎は自分の世界に戻ることを決意します。
会社の同僚や妻など、登場人物は同じなのに関係性が違っている異世界の設定が面白いです。文体も軽く、コミカルに描かれているため、スラスラと読めてしまいます。
ストーリー展開も、意外な方向へと進んでいくため、先が気になって仕方がないです。
日経新聞で連載されていたこともあり、サラリーマンの悲哀や皮肉も感じる濃厚な作品です。
人生がそんなにも美しいのなら 荻原浩漫画作品集
発売日:2020/4/24 電子書籍:〇 文庫本:〇
荻原浩の作品を読んでみよう
荻原浩のおすすめ小説をランキング形式で紹介いたしました。いかがでしたでしょうか。
今回は代表作から最新作まで厳選して紹介しましたが、他にも多くの人気作品があります。
電子書籍や文庫本化されている作品も多いので、気軽に面白いと思った一冊を手に取り、読んでみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人
東京都文京区在住のけんぞうです。
本が大好きで、自分が読んで面白かった本などを中心にWEB編集者として様々な情報を発信しています。
ぜひ、本の出品をお待ちしております。